妖精の尻尾

「・・・つーか、ここは一体どこなんだっ!」


 真っ暗な螺旋階段を昇りながら蒼星はひとりごちていた、蒼星の事を気遣ってかリゲルから休憩して来ていいと言われその場を離れたは良いが、休憩場所を探すうちに蒼星は完全に迷子になってしまっていた。


「てか、なんでここはどこ行っても同じような造りになってんだよ、はぁ」


 先ほどの映像を見てしまった事もあって蒼星はやや気が立っていた、リゲル曰くあの映像は死に直面した人間が最後に見る走馬燈の様なもので、その人にとって【一番成し遂げたい願い】もしくは【一番隠し通したい真実】が映し出されているらしい、たとえどんなに厳正な法の下裁判を行っていたとしても、人が人を裁くのには限界があり万が一冤罪が発生していた場合、その映像は判決では明るみにならなかった真実を映し出す可能性がある為、ドリアードではこの能力を持った人間は本人の意思とは関係なく、死刑執行人の職に就くことが義務付けられているという事だった。


 はぁ、あのクソガキが言ってた『贈り物』ってこの事だったのか、それにしても能力を持ってる人間は強制的に執行人になる・・・か、だとしたら本人に別の希望があったとしても、そんなのお構いなしでこの仕事をさせられるって事だろ?

  なんでみんな何にも言わずおとなしく働いてるんだ? こんないかにもキツくて実りのなさそうな仕事俺なら絶対やりたくない、んー何とか向いてないとか言って別の事務仕事の部署にでも飛ばしてくれないかな・・・

 第一労災も無いのにこんな毎日胃がキリキリする様な仕事やってらんないわ、


 俺はもっとこう流れてくる書類に判子押すだけの仕事とか、オフィスの一番角の席で一日中ユーチューブ見てるんだけど、上司が横を通りすぎる度に急いでエスケープキー押して仕事の画面に切り替えるみたいな仕事がしたいんだよ!


 もしくはいつ来るか分からない盗人に備えて自宅で万全の状態で迎え撃つ準備をする仕事とかね! 夢は会員カードの職業欄にその他(自宅警備員)って書くことなんだ! えへっ♪



「はぁっ、はぁっ、あれ? 頂上?」


 どうでも良い事を考えながら階段を昇っていると、蒼星は気付かない内にエウレーネ塔の一番上の階まで来てしまっていた。


「はぁ、はぁっ」


 普段体育の授業以外はほとんど運動をしていなかった蒼星には、エウレーネの階段はかなりキツく、最上階に着くと息も絶え絶えにその場に倒れこんでしまった。

 リンッ、リンッ。


「・・・えっ」


 蒼星がうつ伏せで倒れていると、突然耳元で鈴の音が聞こえ蒼星は反射的に音が鳴る方に振り向いた。


「・・・・・・・綺麗だ」


 蒼星がふりむいた先には、囚人服に身を包み両手足に小さな鈴をつけた、褐色の肌の女の子が、綺麗な明るい髪のポニーテールを妖艶に揺らしながら、リズムに乗って美しい踊りを舞っていた。

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