死神の業務日報
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プロローグ
「ありがとう・・・バイバイ」
彼女は僕の頬に優しく手を添え、反対側のほっぺたにそっとキスをした。
鎖の冷たさのせいで、余計に彼女の手が温かく思え、枯れるほど泣きはらしたはずの瞳からはまた自然と涙が溢れ出した。
「もういいか」
気を使っていたのか、暫く静観していた看守長が蒼星に問いかけた。
「・・・・」
「はい、大丈夫です」
何も言えず立ちすくむ蒼星に代わって、彼女は居住まいを正しまっ直ぐ前を見て答えた。
「・・・すまんな、行くぞ」
一歩、また一歩と離れていく彼女を見ながら、蒼星は何も出来ずにいた、必ず、何があっても必ずここから救い出す・・・そう誓ったはずなのに、結局自分はここで彼女の去ってゆく後ろ姿を眺める事しか出来なかったのだ。
「うぅ・・・いや、だ・・・ラ・・・ナ」
彼女を止めようと伸ばした手は虚しく空を切り、ただ地面へと流れ落ちる滴の音だけが冷たい石造りの回廊に響いていた
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