◆第5章-1◆それって冷凍食品じゃん・・・~楽子家庭の「カレー事件」

愛理は幸家庭との出会いを通じて『下限』の考え方を基にした『ともラク』メソッドを知った。二人が会話する時間も余裕も少しずつ戻ってきて、『ラクニスト』として歩み始めるようになった。

しかし、二人の仕事が順調になるに連れて、またひとつ問題が浮かび上がりつつあった。その問題は、努の何気ない一言で愛理に重くのしかかるほどに膨れ上がった。それは、「二人とも忙しくなった時に、毎日の食事をどうするか」問題である。

 食事は皿洗いのように単純にはいかない。なぜなら、愛理にとって食事は、努の健康を左右する大きな問題であるからだ。再びともりーなの力を借りることにした愛理。毎日の食事問題を乗り越えられるのだろうか。


愛理「あぁ、今日も残業だ、、、努にLINEしなきゃ。『ごめん、今日もコンビニ弁当でも良い?』」


 採用担当として働く愛理は、最近は面接官としても活躍している。一緒に働く仲間を探し、会社の未来を作る仕事にやりがいを感じている。しかし、夜の8時から面接をすることも多く、面接を終えて事務処理をしていると、会社を出るのは11時を超えることも珍しくなくなった。


努LINE「『いいよー。さっぱりしたやつね』」

愛理「もぉー。具体的に言ってよ、、、でも夕飯担当は私だから買うくらいはしないとね」


 努のあいまいな希望にため息をつきながらも「食事は私に任せてね!」と宣言したこともあって、妥協はできない状態にない。


努「おかえりー。最近遅くなってきたね。採用面接のラッシュ?」

愛理「そうなのよー。それに後輩の育成も入ってきちゃったからね。自分の仕事は後回しになっちゃうのよ」

努「日本はプレイングマネージャーの労働時間が長すぎだよね」

愛理「今はがんばり時でもあるから仕方ないわね。はい、今日のお弁当」

努「え、豚しゃぶ弁当って一昨日と同じじゃん」

愛理「あれ、そうだっけ?でもコンビニってそんなに種類ないのよね」

努「いやいや、ちょっと遠くのローソンに行くとかすればいくらでもあるでしょ」

愛理「ごめん、、、」

努「独身時代は毎日作ってくれてたのにな」

愛理「・・・もっとがんばるから、、、」

努「あ、ごめん。言い過ぎたよ。俺も料理覚えなきゃね」

愛理「ううん、努は片付けしてくれてるから」

愛理・努「・・・」

愛理「明日もお互い早いからさっと食べよ。お風呂入って早めに寝よっか」

努「そうだね。今日もお疲れ様だよ。いただきまーす」


毎日料理をしていた状態から、一昨日の夕飯のメニューも覚えていない状態になっている愛理。その状態に気づきながらどうすればいいか分からない努。二人は共働き夫婦が、仕事と家事のバランスを取ることの難しさを痛感している。


 次の日、いつもより早く起きた努は、昨晩の静かな食卓の空気を払拭するニュースを探していた。しかし、話題の夫婦の離婚がネットで話題になっていることを口にしてしまった。


努「うわー演田さん夫婦、離婚だってさー。ほら、twitterでバズってる」

愛理「え、めっちゃ仲良さそうだったじゃん。なんでなんで?」

努「二人とも月9の主演が決まって忙しくなって、話し合う時間が減ったって書いてあるね。すれ違いだな、これ」

愛理「二人ともいま売出し中だもんな」

努「まぁ、俺たちは会話できないほど忙しいわけではないから大丈夫だよねー(笑)」

愛理「そう、ね」

努「おいおい、暗いよ(笑)」

愛理「ごめんごめん(笑)。さ、行ってくるよー!」

努「行ってらっしゃーい!あ、ついでにゴミ出しといて!」

愛理「あぁ、忘れてた(努が出してくれてもいいのに)。行ってきます!」


 愛理には仕事が順調になるにつれてすれ違う夫婦が、近い未来の自分たちに見えてしまったのだ。「なんとかしなきゃ」。そう思いつつも、昨晩の努の「独身時代は毎日作ってくれてたのにな」という一言が抜けないトゲのように心に刺さっている。


愛理「(うちは大丈夫、よね?今夜ともりーなに相談しよう・・・)」


 愛理は夕方からの会社説明会の片付けを後輩に任せて、いつもより早めの夜7時頃に帰宅した。それでも外は暗くなっていて、最近夕焼けを見ていないことを思い出した。


愛理「ともりーなー!どこー!?」


 愛理は帰宅してソファーに身体を投げ出し、ともりーなを呼んだ。探しに行くのも億劫になっている。ともりーなは冷蔵庫の上からパっと飛んで来て、いつもより早く帰ってきた愛理を嬉しそうに出迎えた。


ともりーな「はーい、おかえりー٩(ˊᗜˋ*)و今日はちょっと早かったのね♪」

愛理「うぅ、聞いてよ、、、もう毎日夕飯作るのなんて無理、、、」

ともりーな「あれれ。努くん、そんなに大食いだっけ?」

愛理「量の問題じゃなくってー!仕事の量も増えたしレベルも上がってるから時間もかかってるしで、余裕ないんだよー!買い出しだって献立考えるのだってほんと大変なのよ」

ともりーな「努くん、愛理ちゃんのご飯大好きだしね(´∀`*)」

愛理「そうなのよ!『おいしー!』とか言ってくれるから、作ってあげたいのよ。努も飲み会とか多くて健康も心配だし。『あと一杯で成約・・・!』ってソファーで寝言してた時は青ざめたわ。せめて家で食べる時くらいはバランスの摂れた食事をしてほしいの」


 愛理は知っている。努は仕事が忙しくなると、お昼ご飯はカロリーメイトで済ませたり、牛丼を3分で食べたりしているのだ。「野菜も食べたら?」とは言ってはいるが、「俺、山登りしてたから体力あるんだよね」と気にしていない。今年はまだ健康診断に行っていないことも気になっている。本当はバランスの取れた食事を三食作ってあげたいのだ。


ともりーな「愛理ちゃん、お料理とても凝るしね!私も食べたーい♪」

愛理「妖精が食べられる物なんて知らないわよ(笑)。ねー他のお家はご飯どうしてるの?どうやって三食ちゃんとつくってるんだろう。また見に行きたいんだけど」

ともりーな「えーっとね、見てみるね。んー、愛理ちゃんのご飯の方がおいしそうだよ٩(ˊᗜˋ*)و」

愛理「やったー、、、って、おいしそうかじゃなくて(笑)。共働きで夕飯をうまくやりくりして、仲良しな夫婦を見に行きたいの」

ともりーな「そしたらねー。毎日作ってなくても楽しそうな夫婦、知ってるよ? 見に行く?」

愛理「行く!」

ともりーな「それじゃー早速!ともりーな♪」

愛理「あれ?今回は妖精にならなくていいのね」

ともりーな「時間の節約よー(*´∪`)」

愛理「そもそも見えないはずだしね(笑)」


※今日はここまで!寒くなってきたから愛理ちゃんを妖精にするのは控えました。人間はか弱いからねー(*´罒`*)明日は楽子(らくこ)さんというお家に生きます。仕事が忙しい共働き夫婦が、いかに毎日の食事問題を解決しているのか気になる!私が食べられるものもありますよーに(*´∪`)


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