◆第4章-1◆食器洗わないの?~幸家庭がポテトの袋と染付きソファーを「放置する理由」~

努とすれ違いはありつつも、お互いがお互いを思いやってることが分かった愛理。すれ違いの原因を特定し、二人の楽しい時間を取り戻そうと前を向いた。そして、ともりーなと一緒に、共働きがうまくいっている幸(さち)家庭にやってきた。

しかし、幸家庭は愛理の理想とは遠い家庭であった。洗わないままの食器、床に放置されているポテチの袋。片付いていないことに違和感を隠せない。「学ぶとこ、ある?」とすら思う。

けれど、愛理はここで『下限』と『ともラク』メソッドに出会うことになる。


ともりーな「はい、到着!幸さん夫婦だよ。結婚して1年ちょっとくらいだね」

愛理「うちより半年先輩の夫婦なんだね。で、玄関から普通に入って大丈夫?また不法侵入だね(笑)」

ともりーな「見えないからから大丈夫!私たち妖精だから♪」

愛理「私、人間なんだけど(笑)」


愛理とともりーなは、リビングに向かっていった。何やら、一人の女性が楽しそうにソファーでテレビを見ている。


ともりーな「幸さんと旦那さんの宏朗(こうろう)さんは、サッカー日本代表のサポーター同士のオフ会で出会って、結婚したみたいだよ。趣味結婚だね」

愛理「え、そうなんだ!私たちも趣味がきっかけだよ。山登りで出会ったんだぁ。…あの時の努、優しかったな」

ともりーな「私も山登りしたーい♪」

愛理「あなたは登らなくても飛べるでしょ(笑)。ところでさ、私見たいところあるんだけど」

ともりーな「ん、そうなの? どこ?」

愛理「だ・い・ど・こ・ろ。台所の片付けって時間がかかっちゃって、いつの間にか24時過ぎちゃうこともあるんだよね」

ともりーな「わかった。見よ見よー♪」

愛理「あなたの家じゃないのに軽いわね(笑)」


 二人は、台所に向かった。仲良し夫婦ということで、きちっと片付いた台所を予想した愛理だったが、現実は意外なものだった。


愛理「え、食器とかめっちゃ溜まってない?旦那さん疲れて帰ってくるのにかわいそうじゃん。さらに疲れそう。これのどこが理想の共働き夫婦なの?」

ともりーな「あ、でも楽しそうだよー(´∀`*)」


突然、テレビのある部屋から幸の声が聞こえてきた。


幸「がっくんスタメンきたーー!!」


今日はサッカー日本代表のワールドカップ出場を賭けた大一番。サッカー好きの幸はスタメン発表からテレビにかじりついていた。


幸「やば、忘れてた!」

そう言って、幸は台所のほうに向かってきた。


愛理「やっと気がついたみたいね。食器溜まってるよー」


 愛理は、聞こえるはずのない声で幸に声をかけた。しかし、幸は台所に来る途中の左の部屋に入っていった。


愛理「え、なんで洗面所行くの?」

そう言って、愛理とともりーなも洗面所に向かった。


幸「これがないとファンとは言えないよね~」

幸は、顔にサッカーボールの形をしたシールを貼っている。


そこに、夫の宏朗が帰ってきた。

宏朗「(ガチャッ、帰宅)ただいま~」

幸「コロちゃん、お帰りー!」

宏朗「幸の好きなコーンポタージュ味のポテチ買ってきたよ~!」

幸「ありがと~!お礼しちゃう♪」


 そう言って、幸は宏朗の頬におそろいのフェイスシールを貼った。


宏朗「え~俺も貼るのかよ~ウヒャヒャヒャ(*´罒`*)」

幸「見る方も気合い入れなきゃ~!ほら、もうサッカーの試合始まってるよ!」

宏朗「よし、俺も見るぞ!」


宏朗は、ダイニングにテーブルに置いてあったご飯をテレビのある部屋へと運んでいく。


愛理「え、リビングでご飯食べちゃうの?ボロボロこぼして、後の掃除大変なのに」


 愛理は食事はダイニングですると決めていた。食べる場所を固定することで掃除する手間が増えないようにしている。テレビを見ながら食べたいと思ったこともあるけれど、あとの掃除を考えるとそうする気にはなれなかったのだ。


幸「先制点きたー!」

宏朗「よっしゃー!」

幸・宏朗「(ハイタッチ)」


ハイタッチの拍子に、宏朗の持っていたお椀が大きく揺れた。


宏朗「(ドンッ)やべ、味噌汁こぼれた」

幸「コロちゃんまた~?ハハハ!はい、これで拭いてね」

幸は近くにあったタオルを宏朗に手渡した。


宏朗「いやー申し訳ない!このソファーには苦労かけますね(笑)」

幸「かけたのは味噌汁でしょ(笑)。どうせソファーはビニール製だし、拭けばいいんだから楽よね~」


愛理「なんだか楽しそうだなぁ。つい最近まで、私たちもこんな感じだったんだよね」

ともりーな「山登りに一緒に行ってた時とか?」

愛理「そうそう。よく一緒に登ってた山に、お賽銭を入れて鐘を鳴らせる場所があったんだけどね。その時に努が『この鐘よりこの金欲しいよな(笑)』って言ったのおもしろかったな。給料日前だったんだよね。懐かしいな」


 効率よりも楽さと楽しさを重視する幸家庭を見ていると、努との懐かしい思い出が蘇ってくる。愛理と努にも、時間も余裕もあった時期が確かにあったのだ。しかもそれは何年も前の話ではない。つい最近のことだった。


宏朗「よし、1対0で折り返した。そっこー風呂入ってくるわ!ハーフタイムの15分で、俺は出れる!」

幸「もう私入ったから、食器片付けとくね」


愛理「お、やっぱり空き時間を有効活用だよね。まとめて洗わないと」


愛理は、幸のあとをついていった。


幸「よっと」

幸は、ドボンと、宏朗の食器を洗い桶に入れた。しかもその洗い桶には、幸が使っていたであろう食器もある。


愛理「うんうん、まとめ洗いだよね」

幸「よっしゃ、これで一仕事終わり」


 幸は、そのままリビングに戻り、ポテチを食べ始めた。


愛理「は?洗わないの?」


 洗面所からは、宏朗の大きな声が飛んできた。


宏朗「(風呂場から大きな声で)後半まだ始まってないよね~!?」

幸「選手戻ってきてるから、もう始まる~!」

宏朗「うぉ~~!」


愛理「片付ける時間あったのにポテチ食べてるし、声でかいし・・・お隣さん大丈夫かな。この家、壁薄そうだし」

ともりーな「私、スポーツは結果から知って安心して見たいの!ともりーな♪」

愛理「え、なになに?」


 目の前がしばらく真っ暗になり、元の景色に戻った。


幸・宏朗「やったー、勝った!!!」


目の前で、幸と宏朗は、手を取り合って喜んでいた。


ともりーな「はい、サッカー終わったよ~♪」

愛理「早送りできるの!?」

ともりーな「だって妖精だから(๑˃̵ᴗ˂̵)و」

愛理「あなたは敵に回すと怖いタイプね(笑)」


宏朗「いやー今日も良い試合だったわー。ワールドカップ本戦にもこの勢いが続いてほしいね」

幸「がっくんも試合の流れ作ってたね」

宏朗「司令塔、この調子で頼むよ!じゃーいつもの記念撮影だな」

幸「だね!ハイチーズ!インスタにアップしとくね」

宏朗「あ、ポテチの袋も映ってるじゃん!散らかってるってバレるわー(笑)」

幸・宏朗「はははー٩(ˊᗜˋ*)و」

宏朗「さて、明日も早いから寝よっかね」

幸「そうだね、今日もお疲れ様!」

幸と宏朗は歯磨きをしたりと、寝る準備を始めた。


愛理「え、ほんとに片付けないの?明日の朝にいきなり洗い物しなきゃじゃん!でも、なんであんなに楽しそうなんだろう。味噌汁こぼれてるし、洗い物溜まってるし。全然きれいじゃないのに」

ともりーな「じゃー聞いてみる?」

愛理「え、あの夫婦から私たちは見えないんじゃないの?」

ともりーな「夢の中で教えてもらえるオプションもあるよ♪」

愛理「さすが妖精アプリね(笑)。聞きたいことたくさんある!」

ともりーな「じゃー早速!ともりーな♪」


※はい、ここまでー。幸さん家庭がサッカー好きなことがわかりましたね。じゃなくって!忙しい中でも趣味を大切にして楽しそうなことがわかりましたね(*´罒`*)明日はその秘密を幸さん自身に聞いちゃいます。愛理ちゃんもともラクメソッドをゲットだね!

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