第2話
メイソン卿が派閥の貴族を率いてデビュタントホールを出て行ってしまいました。
国王陛下に対して何たる不忠不敬!
許し難い暴挙です!
壇上の国王陛下も怒りを面に出されておられます。
ですが、相手は貴族派を率いる大領主です。
父上が率いる王党派が陛下に味方していても、断罪するのは難しいのです。
どうしても断罪するとなれば、国を二分する戦となります。
そんな事になったら、民は戦乱に巻き込まれ、塗炭の苦しみを味合います。
陛下はそんな事は望まれておられません。
陛下は民が安楽に暮らす事を望んでおられるのです。
戦など望んでおられないのです。
それに、内戦が勃発してしまうと、その隙を突いて隣国が攻め込んできます。
「すまんな、グレイス。
お前に無用の汚名を着せてしまった。
こんな事なら、最初からメイソンの奴などと融和など図らねばよかった!」
父上は苦々しく吐き捨てます。
陛下のため民のため、下げたくもない頭を下げて、ここまで話を進めたのです。
忸怩たる思いなのでしょう。
表情には何の変化もありませんが、瞳の奥に怒りが宿っています。
「申し訳ありません、エヴァ侯爵。
全て我が息子コルトンの仕出かした不始末。
コルトンを廃嫡して詫びさせていただきます」
「私も同じでございます。
全ては我が娘ソフィの不始末です。
ソフィを修道院に送り、詫びさせていただきます」
ダファリン子爵とリポン子爵が父上に詫びを入れています。
ですがまずは陛下に詫びを入れるべきでしょう。
「儂の事はいい。
まずは陛下に御詫びするのだ。
それと、コルトンとソフィを誑かしたという者達だ。
その者達を探し出して、何としてでもクルー侯爵との繋がりを探し出せ!」
「「はい」」
父上に連れられて、ダファリン子爵とリポン子爵が陛下に詫びを言上しています。
どの貴族も、派閥の領主である大貴族を陛下より優先します。
御二人とも父上を立ててくれます。
エヴァ侯爵家としては嬉しい事です。
ですがそれでは、国として纏まりがありません。
国王の権力が強化され、大貴族を完全に支配した国に攻め込まれたら、まとまりのない我が国では防ぎ切れないかもしれません。
(御嬢様、ニコラス様から御手紙でございます)
ああ、嬉しい!
ニコラス様はまだ私達の事を諦めておられないのです。
私もそうです!
ニコラス様の事を諦める事などできません。
私達が結ばれる事で、この国の派閥争いを終わらせるのです!
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