桃香と行くプールデート

7月に入った。期末試験が終わり、あとは夏休みを待つだけだ。まなかは高校1年生ながらインターハイ出場を決め、千鶴先輩と俺は夏休みに即売会で販売する同人誌の執筆作業に追われていた。




そんな7月のある日曜日、俺は桃香に誘われ、プールに行くことになった。向かった先は家からバスで20分くらいのところにある、この夏、新しくできたプール。当初は雨が予想されたが、かなり陽が照って、気温も高い。絶好のプール日和だ。そのせいか、オープン前からかなりの客が列を作っていた。俺は「雨予報だったし、ここ小さいプールだから、誰も来んだろうって思っていたわ・・・」とつい、桃香に小言を漏らした。桃香も「そうだね。人多すぎるし、最悪・・・」と言っていた。


そして、朝10時のオープンに合わせて、2人はそのまま自前の水着を用意し、それぞれの更衣室へと向かった。着替えが終わると、俺はシャワーを浴びプールサイドに向かった。規模はあまり大きくなく、流水プールとキッズプール、そしてウォータースライダーがあるくらいだ。そして程なくして、水着に着替え、シャワーを浴びたのか、少し濡れた桃香が現れた。




「樹くんのために、先週新しく買ったんだけど・・・似合ってる?」




可愛い!可愛すぎるぞ!有末桃香ありすえももか!しかし、やっぱり桃香はとっても可愛い。少し低い身長に、いつものおさげを解いた綺麗で長い黒髪。そして雪のように白く透き通った肌。まさしく、俺の理想とする女性なのだ。




「うん、すごい似合ってる!」


「まあアイドルには敵わないと思うけどね」


「そんなことない!」


「ありがとう。お礼だけは受け取っておくね」


「うん。桃香の水着見た時、やっぱり可愛いなって思った。これは本当だぞ」


「そうなの?でも樹くん、私が好きだって言ってたくせに、向こうの高校の先輩や同級生と仲良さそうにしてるじゃんん・・・」


「なんでそうなるの!?俺はまだ、桃香一筋だって!」


「もういいよ!樹くん、女癖悪すぎ!」




なんか桃香の気分を損なった気がする。かなりショック。穴があったら入りたい。でもすぐ桃香は、「樹くんに水着似合ってるって言われて、私、すごい嬉しいけどね」と内心落ち込んでいる俺に言ってくれたが。



桃香の生の水着姿を見るのは久しぶりだ。中学以来?もしかして小学校以来かも。そしたら結構見てないな。昔はよく夏になると、まなかたちと一緒に近所のプールに出かけてたな。桃香は毎年のように、一緒に行ってた記憶がある。そう思うと、時間の経過は早いものだ。


そう俺が考え込んでいるうちに、桃香は流水プールに飛び込んでいた。水しぶきが俺にかかる。




「いつきくーん、早くプール入ろうよー!」


「わかった!これから入る!」




俺は桃香にそう言われたので、プールに飛び込む。そして・・・




「そういえば樹くんって、私の胸に飛び込まないの?」


「え?別に俺はそんな趣味なんて・・・」


「そうなの?私、樹くんなら何されても大丈夫なのに・・・」




結局、俺は桃香の胸に突っ込んだ。いや、突っ込まれたという方が正しいかもしれない。桃香が俺に抱きつき、その影響もあって、俺の顔が桃香の胸に入ったのだ。桃香の胸は意外とある。一言で言えば・・・苦しい。ただそれだけだった。そして、2人で流水プールをしばらくの間、プカプカしていた。




「そういえばここ、ウォータースライダーあるじゃん。行こうぜ」




俺は桃香をウォータースライダーに誘った。桃香も「うん!」と言って誘いに乗ってくれた。




「ちょっと樹くん、どこ触ってるの・・・」


「なんか私のお尻に変な感触がするんだけど・・・」




まず桃香が、そしてすぐ俺がすべり台から降りたのはよかったが、俺の手が桃香の胸に、そして俺の下半身が桃香のお尻に当たったようだ。桃香は「まあ、相手が樹くんだからいいんだけどね・・・」と言ってくれたが。




ウォータースライダーには3回乗った。そして思う存分遊んだところで昼食を食べることにした。時刻はもう昼の1時になろうとしていた。そろそろ昼食にしていい時間だ。


昼食はプールサイドにあるレストランで食べることにした。お昼ということもあって、結構混んでいる。結局、1時間ほど待たされ、俺はラーメンを、桃香は焼きそばを注文し、食べたのであった。




そして昼食を食べると、俺と桃香は流水プールに入った。今度は2人用の浮き輪で仲良くプカプカ。




◇ ◇ ◇




夕方、日も西に傾いてきたので、俺と桃香はプールを出て、シャワーを浴びた後、着替えをするために一度別れた。俺が着替えを終えるとほどなくして、桃香も戻ってきた。




「クシュン!」


「桃香、風邪でもひいたか?」


「いやいや、まだ暑くなる前にプールに入ったからだと思う・・・でも、楽しかったよ!」


「そうだな。俺も楽しかった」


「そう言われると私もやっぱり嬉しいかな・・・今日、樹くんを誘った甲斐があった。私、どうやったら樹くんが好きになれるか頑張ってみるね!」


「桃香・・・」




帰り道、桃香は俺に最高の笑顔を見せてくれたのは言うまでもない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る