俺と千鶴先輩のちょっとしたデート
4月も下旬となったある日曜日、俺は千鶴先輩から「ちょっと私の買い物に付き合って欲しいの。ご褒美もするから」と言われたので、俺は先輩の買い物に付き合うことにした。
「おはよう、鍵山くん」
「先輩、おはようございます」
「・・・ところで、女の子待たせて恥ずかしくないの?」
「すみません。道路が混んでたもので・・・」
午前10時すぎ。待ち合わせ場所である、この都市最大のターミナル駅の西口前に千鶴先輩はすでに到着していた。千鶴先輩は薄い緑のワンピースに、青のカーディガンを羽織り、千鶴先輩の綺麗な長い黒髪とよくマッチしている。
俺と千鶴先輩がまず向かった先は、駅から徒歩3分くらいのアニメショップである。千鶴先輩はここで買いたいものがあるらしい。
「私は色々見回りたいから、鍵山くんも好きなもの見ていいよ」
そう俺に言った千鶴先輩は階段を登り、2階の画材売り場の方へと向かって行った。それと時を同じくして、俺は同じく2階のアニメグッズ売り場に向かう。・・・結局俺はここで、あるラブコメアニメの好きなキャラクターが描かれたポスターとキーホルダーを買った。
「そういえば先輩って全部手作業で書いてますよね?」
「うん。本当はタブレットで全部書きたいんだけど、お金がないから・・・スマホだと画面が小さいから書きにくいしね」
漫画の作画に使う画材を買い込んだ先輩は荷物を俺に持たせてこう言っている。そして、
「鍵山くん、私ここ入りたいんだけどいいかな?」
千鶴先輩は雑居ビルにある書店の方に指を向けた。男性のイラストが書かれている。俺も千鶴先輩について行こうとするが・・・
「鍵山くんはここで待ってて。ここからは乙女の嗜みなの」
入り口の前で千鶴先輩に止められた。そして千鶴先輩は店の方に入って行った。その間、俺は仕方なくスマホを触る。時刻を確認すると、もう12時になろうとしていた。そして、楠本からLINEが届いていた。ちなみに楠本は今日、コスプレの撮影会に出かけている。そして、アニメやゲームのコスプレ衣装に身を通した楠本の画像が立て続けに送られていた。楠本曰く、現場で撮ったようだ。そして、『いつき〜、早く来てよ』、『あたし、樹がいなくて寂しいんだけど!』という文章も送られていた。
しばらくして、買い物を終えた千鶴先輩が戻って来た。両手には買い物袋がいくつもあり、色々買ってきたようだ。俺は「何買ってきたんですか?」と千鶴先輩に聞いたが、「何てこと聞くの!・・・それは、乙女の秘密よ」と言われた。結局この日、千鶴先輩が買った物は俺に明かされることはなかった。
◇ ◇ ◇
時間が時間なので、買い物を終えた2人は駅に戻り、地下街にあるファミレスで昼食を食べることにした。4月ももう終わりだ。外でジッとしていると暑く感じる。そしてこの日は雲一つない快晴でなおかつ、日曜日ということもあって、多くの人であふれ返っていた。
「やっぱり私と鍵山くんって、カップルに見える?」
食事中、俺は千鶴先輩にこんなことを言われた。確かに、高校生の男女2人が一緒に食事をとる光景はカップルそのものだ。俺はふと千鶴先輩を見る。綺麗な長い黒髪に雪のように白い肌。・・・こんな美人を男が放っておくわけがないだろう。結局、千鶴先輩に「鍵山くん。何食事中、私のことジロジロ見てるの。気持ち悪いわ・・・」と言われたが。・・・軽く凹む。
食事が終わると、俺と千鶴先輩はゲーセンに向かった。ゲーセンでは2人でアーケードゲームで対決をしたり、UFOキャッチャーをした。千鶴先輩はUFOキャッチャーが得意で、俺も千鶴先輩にコツを教えてもらったので、お互い色々景品をゲットした。
そして最後は2人でプリクラを撮った。流石にチューはしなかったが、お互い手を繋いだ写真、抱き合った写真、2人でハートの形を作った写真はまさにカップルそのものだ。我ながら見てて恥ずかしい物がある。
「鍵山くんにこれを言うのもアレなんだけど、我ながら見ていて恥ずかしいわね・・・どう考えてもカップルにしか見えないわ」
千鶴先輩もそう思っていたらしい。しかし、「まあ、私は鍵山くんのことが好きになるかもしれないから、そこまで気にする必要はないわね」と 千鶴先輩はすぐ言ったけど。・・・何ですか、その深い意味は。俺の方が気になります。
俺と千鶴先輩はゲーセンを後にすると、まだ少し時間があったため、駅の地下街に戻り、喫茶店で時間を潰すことにした。
「何頼もうかしら・・・」
「喫茶店に入ったのはいいですけど、何頼もうか悩みますよね・・・」
結局俺はトマトピザを、千鶴先輩は抹茶ケーキを注文した。そして夕方、喫茶店を後にした俺と千鶴先輩はそれぞれの帰路につく。俺はバスで、千鶴先輩は地下鉄でここに来た。そして、
「鍵山くーん!今日は色々、付き合ってくれてありがとう!すっごく楽しかったよ」
「はい!俺も先輩と一緒に遊べて良かったです。次は学校で会いましょう!」
千鶴先輩が最後に俺に向けた笑顔は、とても可愛かったのだ。
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