第187話 ガーネットの元へ

 ――はやくガーネットを見つけなきゃ。

 結衣は自力で天使モードになり、ガーネットを探し出す。

 とはいえ、ガーネットの放つ魔力を辿っているだけだが。


 天使モードになった今ならわかる。

 ガーネットがとてつもないほどの力を持っていることを。

 ガーネットがそれに、苦しんでいることを。


「……うっ、ぐぅ……っ!」


 結衣の身体に痛みが奔る。

 ――この姿は完全ではない。

 皮膚が焦げ付き、灼けるような痛みが結衣を襲う。

 頭痛も、腹痛も、心臓が握りつぶされるような痛みもある。


「……っ! 負け、ない……っ!」


 それでも、その痛みに負けるわけにはいかない。

 ガーネットを助けて、またいつものようにドタバタとした日常を過ごしたい。

 それだけが、結衣の身体を突き動かしていた。


「――ったく、一人で無茶しやがって」

「……え?」


 結衣が限界に達しそうになった時、唐突に声をかけられた。

 それは、嫌というほど聞いた声。

 愛しい妹の――たった一人の姉妹の声。


「……魔央……」

「って! もうボロボロじゃねぇか!」


 魔王のような格好に似合わず、本気で結衣を心配する魔央。

 そんな魔央が結衣の肩に手を触れた時、痛みが軽減した。


「……え、な、なんで??」

「ん? どうした、結衣」

「いや……よくわかんないけど、痛みが軽くなった気がする……」

「ほんとか!? なら良かったな」


 ――……本当に、どうして?

 結衣にも魔央にもわからないが、とにかく痛みは完全に引いたみたいだ。


「じゃあ行くぞっ! だけに無茶させるわけにはいかねーからな」

「あ、ありがとう……! でも、どうしてここに?」


 魔央が張り切った様子で言うが、結衣はそこがどうしても気になった。

 結衣が純粋にそう問うと、魔央は照れくさそうな表情を浮かべる。


「……や、その……俺もせーちゃんってやつがどんなやつか気になっててさ、そしたらお前が飛んでくところが見えたから……」


 ――つまり、魔央も一緒に遊びたかったということらしい。

 頬を赤らめている魔央を見て、


(今度は魔央も混ぜて一緒に遊んでもいいよな……今日遊べなかったし)


 と笑顔でそんなことを思うのだった。

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