第186話 緋依の様子に気づいたのは……

「それで? ガーネットはどこにいるの?」


 ガーネットはやはり、何かを隠している。

 それも、とてつもない何かを。

 それゆえ、ガーネットに聞かなければならないことがたくさんある。


「……それは、結衣にも分かるはずよ。天使モード――ガーネットの力を借りないで魔法少女になれるモードがあるから」

「そう。魔法少女になっちゃえば、魔力の流れが分かるはずだよ」


 ――そういえばたしかに、人探しをしている時にすぐにその人を見つけることが出来ていた。

 それはつまり、結衣にも魔力を辿ることが出来るということ。


「……だけど、気をつけてください。ガーネットは自分で自分を抑えられなくなっています」


 緋依はせーちゃんと美波より、重く苦しそうに言う。

 まるで、何かと戦っているように。


「……わ、わかった。けど……なんでそんなことが分かるの?」


 だけど、それに気づいてあげられるほど、結衣には余裕がなかった。

 ――早くガーネットを見つけなければならない。

 それだけで頭がいっぱいなのだ。

 緋依は何かを考えるような仕草をした後、不安そうに呟いた。


「私は――……あ、いえ。やっぱりやめます。とにかく急いでください! これ以上、ガーネットが苦しむ前に」

「……うん。その代わり、ちゃんと後で私に話してね」

「はいっ!」


 不安そうな顔から一転、明るく笑顔で返事をする緋依。

 その肩が震えている様子に気づいたのは、せーちゃんと美波だけだった。

 結衣は早速天使モードに変身し、ガーネットの元へ飛んでいく。


「……良かったの? 結衣に言わなくて」

「そうだよ……あんなに話したがってたじゃないか」


 せーちゃんと美波は、緋依のことを心配するように言った。

 だけど緋依は、不安そうな様子はそのままに、どこか覚悟を決めた様子で言う。


に気づいたのは今のところ私が最初ですから……私がなんとかしなくてはなりません」


 その覚悟に、せーちゃんと美波は付き従うように……薄く笑った。

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