美波の過去

『美波ちゃんはもう――友だちじゃない!』


 あのセリフを放たれてから、美波は色々考えていた。

 ――もっと他に方法があったのではないか、と。

 ――上手くやれていれば、あの子と一緒にいられたかもしれない、と。


 だが、それらはもう全て手遅れなのだ。

 終わったことなのだ。

 そう……ダブルの意味で、終わったこと。


(それなのに未だに思い出すとか……未練タラタラだな、僕……)


 いくら他の友だちがいてくれたところで、あの時の傷は癒えない。

 そういうものなのだ。

 それどころか、楽しいと思えば思うほど……どんどん鮮明になっていっている気がする。


(なんでだろう……なんでか今、あの子に会いたい……!)


 美波は謎の衝動にかられ、その場から立ち去った。


 ☆ ☆ ☆


 あの子の住所は本人から聞いていたため、難なくたどり着くことが出来た。

 だが、中に入る勇気がなく、インターホンが押せない。


「ど、どうしよう……」


 勢いで来てしまったため、どうすればいいのかわからないでいる。

 扉の前で小一時間悩んだ後。


(……そうだ!)


 美波はあることを思いつき、早速実行してみることに。

 美波が会いたい人の家は、周りに家があまりないような場所に建っている。

 そのため、人目を気にしなくていいメリットがあるのだ。


「……あ」


 美波が変身して、二階の窓から中を覗く。

 するとそこには、あの子がいた。

 ずっと会いたかった人が……今、目の前にいる。


(……久しぶり、だね……)


 泣きたくなるのを必死に抑え、美波は少女を見つめる。

 その時、ふと少女の顔が曇るのを見た。


「……今日、だったな……」


 そう言って、静かに涙を流している。


(……あ、そうか……)


 今日は、あの子からあのセリフを放たれた日であった。

 だから、こんなにも会いたかったのかもしれない。


(覚えててくれたんだ……)


 美波は静かに笑うと、その場を後にした。

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