第167話 少女の望みやいかに

「実はですね、結衣様の願いにはあなた様が必要なんですよ」

「……は?」


 変な感じの空気が漂っていたのに、一瞬で元に戻された。

 ガーネットの一言で、状況が変わっていく。


「だからあなた様にお力添えいただこうと思いまして」


 ――ああ、そうか。

 この二人は、結衣とガーネットは、思っていたより強い信頼関係で結ばれているようだ。

 まるで、昔からの友人のように。


「……ああ、わかったよ。だが――タダでは協力できねぇな」

「まあ、そうなりますよねぇ〜。もちろん、タダでとは言いません! 何がお望みです?」


 ガーネットの察しの良さは主である結衣に似たのか。

 それとも、ガーネットが元々だったのか。

 それはよくわからないが、どうでもいいことだ。


「話が早くて助かる。じゃあ、俺の望みを言おう」

「はい、どうぞ?」

「結衣を、結衣の母親を、ここに連れてきてくれ――!」


 ☆ ☆ ☆


「まさか結衣が魔法少女になってるだなんてね……」

「あ、あはは……私もなった時は信じられなかったよ……」


 結衣はお母さんに全てを打ち明けた。


 ガーネットという不思議なステッキに出会ったこと。

 そいつのせいで自分が魔法少女にされてしまったこと。

 たくさんの敵と戦ってきて仲間が増えたこと。


 そして今、何が起きているのかを。


「……あの子の正体については、心当たりがあるわ」

「……え?」

「いつか、話しておかなきゃと思っていたのだけど、どうにも言い出せなくてね……」


 お母さんは不安そうに、自分の罪を懺悔するように語り出す。

 結衣はゴクリと唾を飲み込み、覚悟しながら聞く姿勢を取った。

 ……だが。


「ゆ・い・さ・まー!!」

「え? ちょっ……! ――いったーい!!」


 ガーネットが勢いよく結衣のおでこに直撃し、二人は悶えた。

 一部始終を見ていたお母さんが、心配そうに駆け寄る。


「結衣? ガーネットちゃん? 大丈夫??」

「だ、大丈夫だよ……お母さん」

「ええ、私も平気ですよぉ。お母様」


  二人はおでこをさすりながら、ゆっくり立ち上がる。

 その様子を見て、お母さんは「本当に大丈夫そうね……」と呟いた。


「はっ! そう言えば、お二人に伝えなければならないことが……!」


 ガーネットが思い出したように言うと、結衣とお母さんはお互いの顔を見合わせた。

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