第149話 どこかへ消え去った少女

 カレーを食べ終えると、少女はどこかへ姿を消してしまった。


「あー、もう! 後片付けぐらいしていってほしいよ!」


 結衣は、少女の分のお皿を洗いながら憤慨している。

 訳の分からないことを言い残されて、気がたっているのだろう。

 少し乱雑にお皿を扱っているから。


「結衣さん……もうちょい丁寧に洗った方が……」


 明葉が心配そうに宥めるも、それは無駄に終わった。

 結衣は手を滑らせ、お皿を落としてしまったのだ!


「――……い、いやあああ!!」


 悲痛な叫び声を上げ、結衣の顔が真っ青になる。

 もはや死人のような顔色になってしまった結衣は、その場に倒れて土下座した。


「ま、まことに申し訳ありませんでした……」

「結衣さん、誰に謝っとるん?」


 くずおれた結衣を心配そうに眺める明葉だったが。

 皿洗いで手が離せないのか、眺めるだけで終わった。

 その後ろを、真菜が通過していく。


「……な、なにが……あった、の……?」

「……あー、後で話すわ。すまんなぁ……」


 箒を持ちながら、心配そうに結衣と明葉を交互に見る。

 だが、明葉にそう言われ、渋々ここから立ち去っていく。

 それと入れ替わるようにして、ガーネットが現れる。


「結衣様ー!」

「えっ!? ちょっ……! バレちゃうよ!?」


 人がたくさんいる中、普通に近づいてきたガーネット。

 だが、ガーネットは首――などないが、首を傾げてこう言った。


「あ、いえ。他の方には見られない認識阻害をかけているので大丈夫ですよぉ」

「え……あ、そうなんだ。ならいいけど……」


 結衣は内心ホッとしたが、謎が残っている。

 ――なぜ、ガーネットがここに?

 いや、確かにちょっと前に変身させられてはいたが……


「――ちょっと、嫌な予感がするんです」

「……へ?」


 ガーネットの不安をよそに、空は燃えるように赤く光る。

 風は平和に過ぎ去っていく。

 それはまるで、嵐の前の静けさみたいに感じられたのだった。

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