第147話 便利な記憶消去の魔法
「……まさか、夏音……ちゃんと、戦った……時……の……?」
「ご名答。って、ここまですれば誰でもわかるか」
真菜はその少女に見覚えがあった。
それは、結衣と一緒に夏音と戦った時に見た魔王モード。
その時に口調や雰囲気がいつもの結衣と一変していたから、別の誰かが入ったのだろうということは分かっていたが……
「ここ、まで……結衣に……似てる、とは……」
「ん? 何か言ったか?」
ここまでそっくりだと、結衣本人が夏音に槍を向けたのではないかと思ってしまう。
そんなことをしないと分かっているのに。
真菜は訝しげな顔で少女を見つめる。
「……な、なんだよ。なに見てんだよ……」
真菜の視線に気づき、少女は照れくさそうに顔を逸らす。
……意外と可愛いところもあるんだな。
「と、とにかくっ! 俺の正体は分かったんだからもういいだろ! お前も自分の班のカレー作れよ!」
少女はまくし立てるように言い捨てると、颯爽と空を飛んだ。
蝙蝠のようなマントがはためく様は、夜の王という感じがする。
……まあ、まだ日は出ているが。
「え、な、何今の……?」
「人が……飛んでた!?」
「っていうかあの人って、さっき空から降ってきてたよね!?」
真菜が少女に魅入っていると、近くにいた人たちが騒ぎ出した。
――これはちょっとやばいかも。
「……ガーネット、いる……?」
「はいはーい! いますよぉ!」
「……う、わっ……! びっくり……した……」
小さく呼びかけるも、本当に近くにいるとは思わず。
真菜は腰を抜かしてしまった。
だが、ガーネットは機嫌悪そうに言う。
「オバケが出てきた時のようなリアクションしないでくれます? これでも私繊細なんですからねぇ?」
「……そ、そう……なん……だ……」
真菜はそんなガーネットに、困惑気味な顔で応えた。
そしてハッとした表情に切り替えて、ガーネットに近づく。
「ねぇ……ガーネット。記憶、消去……の、魔法……かけれる?」
「え? ……あー、そういう事ですか」
真菜の問いかけに、ガーネットは辺りを見回して状況を理解した。
「じゃあ、ちょっと結衣様のところに行ってきますねぇ!」
ガーネットはそう言って、結衣の近くまで漂っていく。
ガーネットから話を聞き、状況を察した結衣は、呆れ気味にため息をついている。
そして、誰にも見られないような場所で変身し。
真菜と明葉以外のみんなに、記憶消去の魔法をかけるのだった……
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