第140話 意外な明葉
そして、野外学習当日。
バスに揺られること一時間。
ついに
「わー! ここが……『少年少女自然の家』……!」
「おぉ〜……これは中々な景色やねぇ……!」
結衣と明葉は、そろって感嘆の声を零す。
それほどまでに、
木々に囲まれながらも、都会にあっても不思議はない建物がドンッと構えている。
そして、その隣には白鳥ボートが十体ぐらい浮いている湖がある。
「おーい! こっちに集まれよ〜。点呼とるぞ〜」
自然に魅入っていた結衣と明葉は、水谷先生の声で我に返る。
「じゃあ、行こうか……!」
「ええ……!」
結衣と明葉ははしゃぎたい心を抑え、手を繋ぎながら水谷先生の元へと急いだ。
☆ ☆ ☆
「わー、せまーい」
点呼をとり終えたあと、今日泊まる部屋へ案内された。
……だが。二段ベッドが四つ角に一つずつ配置されているだけで、あとは何もない。
ベッドとベッドの間に人が一人入れそうなぐらいの空間があるだけだ。
「ほぉ〜……この狭さ……ええわぁ〜……」
「ええ!?」
明葉は、うっとりと頬を赤らめる。
そんな明葉の様子に、結衣は目を見開いた。
明葉の家はすごく豪華だ。
伝統的な日本家屋で、庭も公園ほどの広さがある。
……それなのに、狭いところが好き?
「……なんか想像できない……」
結衣はそう言うも、現に明葉はこの狭い空間を堪能している。
そんな姿を見ていると、なんだか微笑ましい気分になった。
「あはは、高柳さんって面白いね」
「ねぇねぇ、“明葉ちゃん”って呼んでもいい?」
すると、結衣と明葉のグループの子たちが明葉に寄っていく。
明葉は、笑顔で迫ってくるグループの子たちに怖気付いて。
結衣に「助けて」と、視線を送った。
「えー……えーっと、みんなちょっと落ち着いて? 明葉ちゃん困ってるから……」
「え? あ……ごめんね」
「部屋が同じだから仲良くしたかったんだけど……」
結衣の呼びかけに、グループの子たちは寂しそうに明葉から離れる。
そして、誰かが腕時計を見ると、
「あっ! やばい! 集合の時間だよ!」
そう言い、グループの子たちは慌てて部屋を出ていく。
取り残された結衣たちも、我に返って一瞬遅れながらあとに続いていった。
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