第128話 本当に小学生?

「……わかったって、何がですにゃ?」


 もうすぐ闇に染まることを教えてくれている、真っ赤な空の下。

 人の頭さえ赤く燃えるように輝く中で、結衣と夏音は歩いている。


「夏音ちゃんってさ、気を失ってたよね?」

「え!? ……あー、まあ……そうですにゃ……」


 あの吸血鬼の少女に拉致られ、眠らされた自分が不甲斐ないのか。

 夏音は申し訳なさそうに顔を伏せる。


「え……? なんでそんなにへこんでるの?」

「…………へ?」


 どうやら夏音は責められていないらしい。

 夏音はてっきり、結衣に怒られると思っていた。

 だが、違うようだ。


「まあ、美波ちゃんだったら怒りながら心配するだろうけどね」


 結衣は苦笑いしながら言う。

 確かに、美波が夏音を叱っている様が目に浮かぶ。

 あの子は本当に夏音が大事なのだ。


「……っと、話がズレたね」


「ごめんごめん」と、結衣は舌を出しながら軽く謝る。

 そして、本題に入った。


「夏音ちゃんの身代わりは夏音ちゃんが出したわけじゃないでしょ?」

「……え? まあ、多分……そうだと思いますにゃ」


「やっぱり!」と、結衣は納得したように声を上げる。


「だから多分、あの人が夏音ちゃんの身代わりを使ったんじゃないかな?」

「えっ!?」


 夏音は驚愕に染まった声を出す。

 どうしてそんなことが出来るのか。

 そのことに驚いているようだ。

 結衣は、そんな夏音の疑問に答えていく。


「あの人の能力は吸血鬼っぽいでしょ? だから――他人の力をコピー出来るんじゃないかなって思ったの」

「……ってことはつまり、んじゃなくて――ってこと……ですにゃ?」


 結衣と夏音は、頭の回転がはやい。

 とても小学生とは思えないほど、ずば抜けている。

 そんな二人は、なおも話を続ける。


「あるいは――血を吸うことで能力をコピー出来るのかもしれない」

「なるほど……確かにその可能性もありますにゃ……」


 学者のように話し込む二人を、ガーネットはとても恐ろしそうに見ていた。


「……小学生の会話じゃないですね……」


 今更すぎるセリフを吐き、結衣たちのあとに続いた。

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