第85話 助けて欲しい人がいる

 痛みが奔る。

 これは頭痛か、それとも――


「ぐっ……!」


 発作だ。

 あの日から今までずっと続いている。


 心臓が悲鳴を上げて、張り裂けそうなほど鼓動している。

 苦しい。痛い。悲しい。


「も、もう……やめ……ろ……」


 今までの嫌な記憶が、走馬灯のように一気に押し寄せる。


『……は、友…………じゃ……』

「う、あ……」


 やめろ。やめてくれ。もうそれ以上は、壊れてしまう。


「あ……っ、ああああああぁぁぁ!!」


 そこで、意識は途絶えた。


 ☆ ☆ ☆


「つい貰っちゃたけど……食べるわけにいかないよね、これ……」

「そうですねぇ。なにが入れられているか分かったもんじゃないですしぃ」


 場所は変わり、結衣は自分の部屋でまだ悩んでいた。

 このチョコレートパフェをどうするのかを。


 勉強机に腰掛け、チョコレートパフェを眺める。

 だけど、いい案が見つからない。


「これ……どうしよう……」

「なにがです?」

「いや……このまま捨てるのも勿体ないよな〜って思って」

「あぁ〜、なるほどぉ」


 そうしている間にも、刻一刻と時間が過ぎていく。

 仕方なく捨てようと席を立ったその時。


 どこからともなく、風が吹いた。

 開けていた窓から、和服の狐が入ってきたようだ。


「結衣おねーさん……」

「夏音……ちゃん……?」


 和服の狐――夏音は、今にも泣きそうな顔で結衣を見る。

 結衣はと言うと。


「なんで窓から入ってきたの……」


 そこにツッコまずにはいられなかった。

 だが――

 既に日が沈み、蒼い光が窓から射し込んだ。


 電気をつけることを忘れていて、結衣の部屋はじんわりと闇に包まれる。

 そんな雰囲気に、ふざけている場合ではないと感じたのか。

 いつも騒がしいガーネットが大人しい。


 結衣もツッコんでる場合じゃないと、頭を掻く。


「それで……何があったの?」


 そして、夏音がここを訪れた理由を訊く。

 結衣が訊くと、夏音はぎゅっと拳を握りながら言った。


「結衣……おねーさん。あいつを――救ってやって欲しいんですにゃ」


 夏音は堪えきれなかったのか、大粒の涙を流す。

 夏音が誰かを想って涙を流している。

 そのことに、結衣は嬉しくもあり――


 それと同時に、嫌な予感がしたのだ。

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