第72話 七不思議探検の続き!

 結衣が夏音と仲良くなった翌日。

 寝不足な身体にムチを打って、無理やり登校した。


 その放課後。

 結衣たちはまたも、図書室にいた。


「早く帰って寝たいんだけど……なんでここに呼ばれたのかな?」


 辛うじて目を開けて、疑問を投げかける。

 それだけでも非常につらい。


 だが、真菜は結衣の睡魔に気付いていないのか。

 さも当然だろうというような顔をして――


「だって……まだ、七不思議……全部……まわって……ない、じゃん……!」


 七不思議の探検を再びやろうと言ってきた。

 それを、結衣の隣でひっそりと聞いていたガーネットが笑いながら、


「行きましょう、結衣様! 絶対楽しいですよぉ!」


 何やらすごく胡散臭い“絶対”を言い出す。

 はぁ……とため息をつき、結衣は新たなメンバーに視線を向ける。


 その先には、茶色の短い髪が西日に当たって、黄金に輝いているように見える年下の少女の姿があった。


「なんですにゃ……? そんなにジロジロ見ないでくださいですにゃ」


 訝しげな顔をして、不機嫌そうに瞳を揺らす。

 秋風夏音。先日和解したばかりの、新たな仲間だ。


「あー、ごめんごめん。髪の毛綺麗だなーと思って」

「にゃっ!? 結衣おねーさん、夏音の髪褒めてくれたですにゃ!?」

「え、あ、うん……? ……すごい食いつきっぷりだね……」


 鼻と鼻がくっつくほど近くに寄ってきて、夏音は目を輝かせる。

 その時、何かの花のような匂いが鼻をついた。

 この香りは――


「金木犀……?」


 結衣が首を傾げてスンスンと鼻を鳴らしていると、


「その通りですにゃ! うちの旅館自慢のシャンプーですにゃ!」


 夏音がふんぞり返って、胸を張る。

 確かに、あの旅館の売店には『当館限定シャンプー!』と書かれたものが売られていたのを見た気がする。


 そういう風にわいわい騒いでいると、急に先生が来て、


「お前達、何やってんだ。早く帰れよ〜」

「あ、はい……ごめんなさい……」


 そそくさと、結衣たちは図書室から出た。

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