第31話 新たな敵の予感
――せーちゃん大好き!
その言葉が何故か耳から離れず、ずっと張り付いたままこだまする。
「あああああ!!」
せーちゃんはそのまま膝から崩れ落ち、悶えた。
顔を真っ赤にさせ、ゴロゴロとその場に転がる。
「……なんでこんなにドキドキするんだろう」
その気持ちが何か分からず、悶々とした気持ちを吐き出したい気分でいっぱいだった。
「はぁ……勢いで来ちゃったけど……ここ――どこ?」
その次に、『私は誰?』というフレーズが聴こえてきそうな台詞だが、ノリは良くないのでスルーさせてもらう。
ところで、せーちゃんの眼前に広がる光景はと言うと――
「隣町かな……ここ……」
見覚えのない家ばかりで、何故か目の前には神社がある。
せーちゃんは少し戸惑ったが、自分の家とはあまり離れてはいないらしいことに気付いた。
なぜなら結衣といた――少し小高い所にある森が、辛うじて見えるから。
それは当然だろう。小学生の足で走っただけなので、そう遠くへは行けないからだ。
しかし、問題はそこではなく――
「どうやって家に帰ろうかしら……?」
そう。無我夢中で走ったため、帰り道がわからないのだ。
我を忘れて駆け出したので、結衣にお願いされた、真菜を救うことの手伝いも忘れていた。
どうしようか悩んでいると。
「こんにちは〜! ちょっとよろしいでしょうか?」
ふわふわとした、気の抜けるような声が後ろから聞こえた。
神社の長い階段を登っていたせーちゃんが振り返って確認すると、太陽の光を浴びて輝く檸檬色の――肩に付くか付かないかの短い髪が見える。
そして声をかけた少女は、アクアマリンのような綺麗な水色の瞳でせーちゃんを捉えている。
その少女の薄い桜色のワンピースが、風でヒラヒラと揺らめく。
「は、はぁ……なんですか?」
せーちゃんは警戒しつつも、少しだけ年上のようにも見える少女に質問を返した。
「うふふ。ちょっと人を探しているのですが……椎名結衣? という方を知りませんか?」
「し、椎名……結衣?」
まさか――と思ったが、名字を聴いたことはないし、同じような名前の人は多いから人違いかもしれない。
せーちゃんはそう思って、『知らない』と口を開こうとしたその時。
「あ、もちろん――
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