空白の告白

石兵八 陣

雨そして分岐点

 五月二日 その日の放課後は雨が降った。

 今日の天気予報はどこも晴れ表示。

 ガラスの破片のように細かく鋭い雨が道行く人の身体もこころをも濡らしてゆく。

 他の生徒が慌てて帰る中、俺は歩いた。

 北高校の1年にして帰宅部、

 そして突然の雨。

 当然、傘は持っておらずゆっくりと歩く俺を雨は平等に濡らした。

 高校での数少ない男友達であり、幼なじみの桜田 敦は補習で先生に捕まっている。

【 帰り道一人】

 それは彼女なしの童貞高校生にとって決して楽しいものではないだろう。

 しかし、

咳をしても一人のように孤独を謳ったようなこのうたは、俺にとっては孤独を嘆いている訳では無い。

 幼稚園から今に至るまで、敦と帰る帰り道。

 楽しくない訳では無い、しかし滅多にない独りでの帰り道に俺は新鮮味があった。

 「今日の夕飯 妹は何を作っているのだろうか?」

 そんな些細な事を考えることさえも、楽しかった。

  「 ダンッ!!!!」 

 その時、凄まじい音と共に俺の身体に衝撃がはしった。

〔運命〕それは残酷である。時として運命は

些細な幸せさえも人から奪ってゆく。

俺にとってその初めては今日と言えよう――



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空白の告白 石兵八 陣 @realsky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ