お昼(後半)

「見たことは許さないけど、今回のには私も非があるし一旦許しといたげる」


普段あまり感情を表に出さない東雲は耳まで赤くしてプリプリ怒っている、なんだか可愛い。まぁ何はともあれ許してもらう事が出来て良かった。


「それにあやめも、誤解は解けたでしょ?こいつらはあんたを取って食べたりしないから話してみなよ」


「んー...」


東雲の後ろに隠れている女の子、四十川あいかわあやめは俺たちをまだ恐れているようだ、あの後東雲は俺たちの事を咎めはしたが事の顛末てんまつを四十川に説明してくれた。それだもまだ警戒しているのだ、勘弁してほしい。


「僕は3-5組片岡隼人ーよろしくねー」


この気まずい空気の中片岡が切り出した。俺も流れに乗ろう。


「俺は片岡とクラスは同じく3-5、小鳥遊祐樹だ、よろしく」


するとようやく話す気になってくれたのか東雲の後ろから出てくると自己紹介を始めた。


「さ、3-1組四十川あやめです、よ、よろしくお願いします」


緊張しているのだろう、目があちらこちらに泳いでいる。


「じゃあ、自己紹介も終わったしお昼食べましょ、もう時間もあまり残ってないみたいだし」


左手につけた時計を確認すると針は12時10分を少し過ぎたくらいを指していた、昼休みは12時30分までなので長々と話す時間はないようだ。


「じゃあ今日の放課後みんなで残って親交を深める意味も込めて勉強会しない?期末テストも近いし時期的にもちょうどいいでしょ」


「まぁ、俺はいいけど片岡はどうする?」


「しのりんのお誘いを断るわけないでしょ」


額に手を当て決めポーズをとりながら答える片岡の答えはYESだ。


「だそうだ東雲」


「決まりね」


時間がない俺たちはあまり会話もせず黙々と弁当を食べ、教室に戻った。そういえば四十川としたきちんとした会話は今の所自己紹介だけだった、無理にでも話題を振るべきだったか?


そんな事を考えていると東雲が俺の思考を読んだかのように申し訳なさそうな顔で話しかけてきた。


「あの子ああいう性格なの、許してあげてね」


「いや、俺達の方こそまともな会話も切り出せなかった」


すると東雲はふふっと笑った。


「やっぱあんたらいいやつだよ...」


「ん?」


「ううん、なんでもない、それより今日の勉強会北館2階のN-2教室だからちゃんと片岡も連れてきてね」


「了解した」


俺がそう答えるのとほぼ同時に授業開始の鐘がなり授業が始まった。

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