お昼(前半)
「あんたらっていつも二人でお昼ご飯食べてるの?」
二時間目が終わりに東雲が急にそんな事を質問してきた。
「そうだが、どうかしたのか?」
「じゃあ今日一緒にお昼ご飯取らない?」
東雲から俺たちを誘うことは少なく珍しいなと思っていると先ほどの現代文の授業を8割寝て過ごしていた片岡が手で片目を眠そうに擦りながら俺の気持ちを代弁するかのように口を開いた。
「んー、しのりんからのお誘いなんて珍しいね」
「そう?そんな事ないと思うけど」
首を少し傾け優しそうに微笑む、今日の東雲はなんだか上機嫌だ。
「あ、そうそう」
何かを思い出したように傾けた首を元に戻し人差し指を立て。
「もう一人お昼に参加する子もいるから仲良くね」
「まさか!しのりんの彼氏!?」
「馬鹿かお前、私があんたら以外の男子とつるんでる所見たことあるのか?」
「確かに、しのりんは万年独り身たいs...ひ、ひたい!ひたいよひまりぃんん!」
頬を思い切り東雲につねられている片岡は置いておくとして、東雲が連れてくる女友達か、そういえば東雲の友達について俺たちはよく知らない。クラスの中では周りの女子と話してはいるものの遊んだりする中ではないようだし。とりあえず、今俺がわかる事とすれば俺は少なくともその東雲の友達とおそらく初対面、という事だ。
どれだけ考えてもこの情報量では誰か分かる訳もなく無駄なので俺はおとなしく昼まで待つことにした。
四時間目が終わり俺と片岡はいつものように食堂に向かうのではなく東雲に続いて歩いた。そしてついた場所というのは
「屋上?」
俺たちは屋上に出る事ができるドアの前にいた。
「なぁしのりん、でも屋上って鍵されてて入れないだろ?俺も一回入ろうとしたけど閉まってたぜ」
「そりゃね、ここの校舎大分ガタきてるとこ多いし柵にもたれかかってて生徒が落下なんてシャレになんない、だから無断では立ち入れないようにして当たり前よ」
「じゃあなんでこんなところまで来たんだ?」
俺がそう質問すると東雲はニヤリといたずらをする前の子供のような笑顔になり。
「それはドアから入ろうとするから入れないだけ、ドア以外から入ればいい」
「「?」」
俺も片岡も頭に?のマークが浮かんだ、そんな俺たちに東雲は指差しをしそちらの方向を向くように指示する。
「窓?...あそこから入るのか!?」
今度は自慢げにニヤリと笑い、まるでお手本を見せるかのように堂々と窓から屋上に出て行こうとした、そこまでは完璧だったのだが...
「東雲?」
「何?」
「言いにくいんだけどさ、あの、見えてる」
「ん?」
一瞬何のこと言っているのか分からなかったのだろう固まったのちに
「水色って以外...」
片岡の一言で全てを察し耳まで真っ赤になり
「あ、あんたたち!み、見ないだあぁぁぁぁぁ!」
焦って無理にそれを隠そうとし窓の向こう側に落ちていった。
「お、俺たちも行くか」
「そ、そうだな」
「は、破廉恥で、ですよ、こ、こんなの...っ」
泣き出しそうな顔をし、足が生まれたてのヤギ見たくなっている身長165センチほどの女子が俺たちのことを注意している。いつからそこにいたのかは分からないが弁当箱を持っているので恐らくは東雲が言っていたもう一人の子だろう。
「破廉恥ですよぉぉぉぉ!」
「「いや!誤解だぁぁぁ!」」
最悪の昼休みが始まりそうな気がした。
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