『核シェルター』

やましん(テンパー)

『核シェルター』

 『このお話は、風邪の熱に浮かされて書いた、幻想によるフィクションであります。現実とは、多少関連性がありますが、事実関係はまったくありません。国名なども、すべて架空のものです。』


   🚀        🚀



 スマホで、『近所の核シェルター』を調べても、まともな回答は帰ってきません。


 どうやら、ぼくの居住地域には、そうしたものは、ないか、あっても、公開されてはいないのか、どちらかで、ありましょう。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 核シェルターというものは、防空壕の一種かもしれません。


 ただ、もし、個人的に設置している場合は、公共のインフラではないわけです。


 この国では、なんとなく、非人道的な施設なんじゃないかなあ、という認識も強かった気さえいたしますが。


 たとえば、アメリカ国などでは、シェルターの備品に、銃が入っていました。無理やり入ろうとする部外者を、追い出すためのものです。


 でも、たくさんの人が、銃を持っていますよね。


 個人的なシェルターに入るための、銃撃事件さえもが起こりそう?


 しかし、最近は、なんとなく、この国でさえも、風向きが、やや、違ってきたような雰囲気があります。


 都市伝説的には、地下鉄のトンネル内が、シェルターなんだとか、じつは、広大な地下施設が、首都にはあるんだとか…………



 まあ、実際には、核兵器は、使えない兵器でした。


 しかし、このところ、それを、実際に使おうという考えが、指導者のなかに、蔓延しだしているのではないかと、疑いたくなります。


 つまり、全面核戦争は、やらないという、了解の元で、一回、ためしに使ってみよう、という、わけです。


 じつは、核保有国は、密かに共同で、そこんところを研究してきておりました。


 『もし、核攻撃するなら、こことここは、外してほしい。』


 とかも。

 

 そんなこと、ありえないだろう?


 と、いう世間の常識をよそに、部分的核戦争の危機は、増大してきておりました。


 とくに、隣り合う、あまり仲の良くない国どうしの間での紛争が危険でした。


 核による部分的な攻撃が、もし十分にありうるとすれば、核シェルターの設置には、いかなる意味があるのでありましょう?


 それも、自己責任なのでありましょうか?


 もし、政府ではなくて、各自治体が、核シェルターを作ることが、義務化されたりしたら(名前は、『災害避難壕』かもしれませんが)それは、本来の非核原則にさえ、反することなのでしょうか?


 そもそも、住民全員を保護できるのでありましょうか?

 

 それも、公営住宅みたいに、抽選かな?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 最近は、めったにお外には出ないのに、たまたま、外出したら、こうです。


 『緊急警報。『あちら国』から、ミサイルが複数発射されました。5分以内に、近隣に着弾の可能性あり。直ちに、頑丈な建物などに、避難してください。』


 町内放送らしきが、叫んでおります。


 まあ、と、言われましても、見渡す限り、民家と、山と小さな川と、古墳ばかり。


 都市部からは、10キロばかり、離れておりますが、メガトン級の核弾頭なら、すっぱりおしまいです。


 あらら、なんだろう?


 地面にまんまるな穴が開きましたよ。


 外国からの観光客らしき、サングラスや、フードを被った一団の人たちが、あわてて穴の中に入ってゆきます。


 ぼーと、眺めていたぼくを、一人の女性が引っ張りました。


『ヘイ。ユー。カム、ヒあ❗ はやく!』


『はあ?』


 彼女は、有無を言わせず、ぼくを、その穴の中に引っ張り込みました。


 じつは、その、直後、どうも、あまり、正確性のない、ミサイルだったらしくて、都心からは大分はずれて、ぼくがいた場所のわりと近くを、核弾頭が直撃したのでした。



  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 その模様は、この不可思議な空間の中で、中継されておりました。


 まず、


 『びか!』 ときました。


 それから、『ぎらぎらぎら~』


 となりました。


 巨大な雲が立ち上がります。


 『ご覧の様に、この核弾頭は、『1メガトン』クラスであったようです。火球の半径は、1キロメートル程度であります。・・・・・』


 解説が入りました。


 『これから、熱線が輻射されて行きますが、この、過程が、『ぎらぎら』状態で、1メガトンならば、ほら、こうして、約8秒ほど続きます。』


 映像は、地上付近から、上空まで、自由自在に動いて行きます。


 ドロンの映像のようですが、もっと素早く、迅速にして的確です。


 いくつもの角度や高度から、複数の映像が描き出されておりました。


 『え、このあたりのおうちは、一斉に燃え尽きましたね。


 爆心により近い、ここらあたりにいた人は、みな蒸発しました。


 すぐに、衝撃波があたりのすべてをなぎ倒してゆきます。


 これは、ここに見られますように、吹き返しを伴っております。


 ここのあたり、爆心から、少し離れていたこの人たちの方が、より、残酷な状況になりましたね。』


『お~~~~!』


『おぎゅわ~~~~~』


『どあ~~~~~~~!』


 周囲から、声が上がりました。


 大やけどをして、倒れている人たちが中継され、爆心から離れてゆくと、直撃では生き延びた人たちの数が、少しずつ多くなり、ふらふらと彷徨う姿が映されました。


 ぼくは、とてもじゃないけど、直視できない状態になりました。


 映画としか思えない。


 これが、現実な訳がありません。


 にもかかわらず、ここには、演出ではない迫真性がありました。



 それにしても、この一団の人たちは、いったいなんなのでしょうか?



  ************   ************



 『なんぜ、この惑星の人は、こんな不経済な爆弾を使うだ?』


 どこかの、大きなサングラスに、麦わら帽子のおじさんが尋ねました。


 『この現地時間の1945年に、このエリアで、実戦で2回、核爆弾が使われました。今のよりも、はるかに小さな規模ですが、それでも大きな被害が出ましたし、その影響は今なお続いています。みなさんがいらっしゃるこの『クニ』というエリアでです。我々には『クニ』という囲い込みはないので、分かりにくいですが、この惑星では、一定の個体がまとまって集団となり、ひとつの『クニ』という集合単位を作り、外部との壁を作るのです。仲良くもしますが、喧嘩もします。これは、喧嘩の終わらせ方の方策として、また、それ以後の、支配関係の構築や、その後の本格的使用方法の参考として、また、『てき』という存在を常時脅迫する手段として、一種の実験もかねて、実行されたのだと思われますが、そこんところの真相は、はっきりとは、解明されておりません。地球人類行動学の見地からも、注目されています。この地球人類種と言う、特異な攻撃的知的生物の習性を知るうえできわめて、重要です。今回は、特にそうです。専門家たちも、同じようなシェルターの中から、まさに今、専門的観点から研究しておりますでしょう。』


『あんのお~~~~。研究、といったって、これじゃあ、研究対象が、すぐに、いんなくなるんじゃあないですかあ~?』


 けっこう、かっこいい、女性・・・ぼくを、ここに引っ張り込んだ方ですが・・・が尋ねました。


『はい。今回は、『国』どおしが、事前に秘密交渉し、核弾頭の使用について、上限を設定していた様です。ただし、交渉に反対だった『クニ』もありますし、そもそも声をかけてもらってない『クニ』もありで、成り行きが注目されております。はい。』


『ふ~~~~~ん。ここの中は、大丈夫なんかいな?』


『はい。ここは、次元がずれておりますゆえ、安全です。』


『あの~~~~~~。』


 ぼくが、声を出しました。


 みなが、一斉に僕を注目しました。


『ぜんたい、みなさんは、なんなのですか?』


『おー! あなたは、たまたま、穴のすぐわきにいらっしゃったので、見かねて、ここに入っていただきました。見捨てるわけにはまいりませんゆえ。我々は、『大銀河観光旅行団』であります。この銀河系のお隣り、アンドロメダ銀河を本拠とする旅行会社が主催しております。この、地球ツアーは、そのなかでも、最高の見せ場でありまして。ほらね。』


 広告らしきものが、画面の一部に浮かびあがったのです。


『これは、見る人に一番分かりやすい言語で見えております。会話も同様であります。』 



*************************************

*       『大銀河観光ツアー』

*       【第1003561日目】

*   {本日の予定}

* 

*    当ツアー、一番の見せ場!

* 

*     戦乱の惑星『地球』!

* 《誕生以来、戦争をつづけてきている、謎の生物、『地球人』!

*  あなたは、まさに、《核分裂》と《核融合》を武器として使う、宇宙

* 随一の危険生物の実体を、見るのか!神秘の惑星地球をまるまる体験!》

*  地球の素朴な田舎料理が堪能できます。安全なおいしい料理です。 

*  ツアー・マスター推薦料理です。

*  庶民は、みな原始的で大方平和的ですが、マナーを守りましょう。

*  攻撃すると、反抗されます。地元の治安機関に拘束されます。

*  それなりの文明をもっていますので、エサはやらないでください。

*     

*  綿密な情勢把握はしておりますが 必ず核戦争があるとは、限りません。 

*  事前講習会を開催いたします。ツアー参加者は、必ず参加してください。

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 『核戦争があるなんて、僕らは知らないよ!』


 『これは、我々独自の情報にもとずくものです。お気の毒です。』


 『じゃあ、この先どうなるかも知っているの?』


 『未来はわかりませんよ。ただ、我々の情報では、もう停戦になるはずです。え?なに?・・・・・・・・ は~~~~~~~~。』


 『ど、しましたか?』


 『いやあ~~~~。あなたの『クニ』ではない、ビッグな『クニ』が、お互いに、約束破って、ICBMを全部発射したということらしいですなあ。ははは。さすがに、我々は、退去しましょう。あなたは、安全そうな場所に降ろして差し上げますゆえ。ご安心を。』


 ぼくは、この宇宙人の観光会社が設置した、『事務所兼核シェルター』の中に、瞬時に降ろされたのです。


 彼らは、この事務所の職員も連れて、『地球の周囲から観察する』から、とか言って、去ってゆきました。



 で、どうしろって言うの?



  ************  🚀 ************



                               おしまい




 













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『 またく、どうしろって、いうの? 』

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『核シェルター』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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