蛆の王
呼吸する器具
苔農夫ジャクバの選択
もはやこれしかない。
意を決し、ジャクバは息子に命じた。
「〈梢の宿〉へ行って、蟲使いを呼んでこい。誰にも見られぬようにな」
逞しく愚鈍な長男は、すぐさま父の言葉に従い、発った。
遠ざかる布靴の音。入れ替わりに、天井の低い室内へ静寂が這い込む。〈
「これしかない……これが家族のため、最もよい選択なのだ……」
天井に植えた
これから行うことは、悪行に違いない。
邪悪な力を借り、恥ずべき嘘を拵え、その罪を家族で抱えてゆかねばならない。
だとしても――
「……やらなければ、我が家が破滅するのだぞ!」
――選択の余地がないのだから、これは仕方のないことだ。
短くはない時を費やし、ジャクバがようやく自分を納得させたと確信できたころ、長男のノジームが戻ってくる。
戸が開き、かすかな異臭。糞尿のような――屍体のような。
そして、息子の後ろに続き、全身を奇怪な装束に包んだ人物が、ゆらりと入ってきた。
おぞましき蟲使いの技を受け継ぐ、呪術師であった。
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