不死者の少女は鬼王と契約する

雪月華@33331111

少女、名を華媛桜夜

少女、死なず

頭の片隅をよぎる、残酷な言葉。


『やだよ、化け物!来ないでよ!』


『え、桜夜ちゃんが入るなら私抜ける』


『だって、桜夜ちゃん、怖いもん』


『桜夜ちゃんの回りって変な事起こるよね』


『知ってる!鋏が踊り出したりするんだ!』


『えー、華媛さんも誘うの?』


『辞めとこうよ。たって』


【華媛さんって、おかしいじゃん。】


「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、・・・夢」


手を、無意識に見てしまう。


「夢、ならよかったのに。」


なんの傷もないその手を。


「おかー、さん・・・」


桜夜は写真立ての中の母を見る。


「おはよう・・・」


一滴涙が落ちた。


「やな夢見ちゃったな・・・今更なのに。」


台所に立ち、手元の棚を開ける。


「もう私と話してくれる人なんて、居ないのに。」


自虐風に呟き包丁を握る。


そして、喉元に、刺す。


「っ、はぁ。・・・ん・・・」


血が流れる。


プツリ、とのどに破滅の音がなる。

──カラン──

包丁は桜夜の細い指から落ちる。

命潰えるかと思われる。


「今日も、死んでない・・・」


桜夜の喉元は穴ひとつ、傷ひとつなく、塞がっている。


「ハハッ。お父さん、お母さん。なんで私を生んだの・・・」


包丁を仕舞い、制服に着替える。


「バカみたいな、私を・・・」


桜夜は重々しく扉を開く。


まるでその背に背負うものをそっとかかえるように一歩を大切に。


過去と未来を見失わぬように、ゆったりと。

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