状況把握
その後しばらくして、俺達1A一行はパミリオール地下神殿の講堂に通された。
気を取り直して、と一度深呼吸をしてから先ほどの指揮官が話し出した。
「私はミネリア皇国第三皇子、ミネリア・フォルディス・アルヴァート。我等もまだ状況を確認できていないのだが。貴殿らはどうやら大規模な魔的災害に巻き込まれたらしい。貴殿らが何処の何者なのかもわからぬが、ひとまず情報交換をしたいと思う。不安かもしれぬが協力してくれるか?」
…指揮官は皇子だった。え?
「リリアネーラ、彼らに状況の説明を、私はひとまず父上に報告してくる。」
「わかりました。」
講堂に通されたときにすでに講堂の座席にいた、リリアネーラと呼ばれた少女が口を開いた。
「改めまして、ミネリア皇国第二皇女、ミネリア・リリアネーラです。」
…皇女様だった。
おいそれと、皇族が一般人に会って良いのだろうか?
それともそれだけの状況なのか。
疑問に思いながらも、彼女の声に耳を傾ける。
「まず現状況を簡単に説明すると、皆様は【歪み】によってここ、パミリオール地下神殿に飛ばされてきた、というのが我々の見解です、まさか【歪み】によって人が現れるということがあるとは思いませんでしたが。しかしご安心ください、皆様は我々が責任を持って故郷までお送りしますから…」
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
突飛なことを言い出した皇女様に青木先生が待ったをかける。
「えっと…なにか?」
皇女様はまさか止められるとは思っていなかったらしく、キョトンと首を傾ていた。
「えっと、まず、私たち帰れるのでしょうか?」
「…あら?もしや魔大陸の方でしたか?すみません、その場合は避難民として保護されることになります。」
更に突飛な言葉が出てくる
「いや、そうでもなく…」
「…あれ?まさか皇国民でしたか?すみません!」
「あーですから…」
だんだんと口調が崩れてくる皇女様と青木先生の噛み合わない会話に場が呆れてくる。
「ここは僕達から説明した方がいいかもしれませんね、先生。」
その事態に、我が1Aの委員長こと篠原篤志が声をあげる。
メガネの似合うイケメン委員長、と言えば大抵のことは伝わるだろうか。責任感が強く、まだ半年も過ごしていないクラスをよく纏めている。
「いくつか質問させて頂きたいのですが」
と前置きをして、
「ぶっちゃけ、やはりここは異世界なのでしょうか?」
ぶっちゃけた。
「異世界?」
「はい。僕らの世界には魔法?ですか?先ほどアーデリア様が言葉を通じるようにしていただいたようなもの…のような不思議なもの、はありませんでしたし。皆様の言葉も知らないものでした。ミネリア帝国という国もパミリオール神殿というものも聞いたこともありませんしそれに、アーデリア様のことも。そうなるとここは夢の中か異世界だとしか思えないのですが。」
「そんなことが……」
「あり得なくはないでしょう。」
絶句するリリアネーラの横で静かに話を聞いていたアーデが苦い顔をする。
「あの規模の予兆、そしてそもそもあの【歪み】の本質とは空間と空間を繋げるというもの。他の世界の空間と繋ぐこともきっと不可能ではありません、実際に異界とつながったことも前例がないわけではありません。」
「共通語も伝わらないし、皇族てある私も見たとことのない服装。おかしいとは思っていたが…まさかな」
いつの間にか帰ってきていた指揮官もとい皇太子様が俺達の制服、明のブレザーを眺めながら唸っている。
「服ですか?これはブレザーと呼ばれるもので、学校の制服ですよ、夏服ですが、」
明がワイシャツを引っ張りながら説明を始める。
「『学校?』とは?」
「えっと…教育機関です。学び舎って言えば通じますか?」
「あぁ、成る程」
「異世界からの転移者…まるで物語のようだな……にわかには信じられぬ。詳しく聞かせて貰えるか、ここに来るまでの経緯を。」
「はい」
皇太子様の要望に俺達は頷き、これまでの経緯を話した。
あの、始業式後のホームルームでの出来事を。
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