四章 永遠を求めし者達
様々な出会い。っていうか敵視されたり恨まれたり
ボクの生活は一変……しない
ドラゴンゾンビ。それは最強のゾンビ個体だ。
咆哮をあげる顎は家一つは丸呑みできそうなほど大きく、その牙は鉄すらかみ砕くほどの鋭さと強さを持つ。腐った翼は空を飛ぶことはできないが、
しかしその脅威は、その身体に突き刺さった多くのバス停により、今沈黙した。
「勝利だ!」
「勝利だ!」
「我ら【バス停・オブ・ザ・デッド】の勝利だ!」
上がる勝鬨の声。その数は五〇〇を超え、それだけのバス停がドラゴンゾンビに突き刺さっている。そしてその声を受けるのは言うまでもない、ドラゴンゾンビの頭の上でとどめのバス停を突き立てた
「流石洋子様!」
「我らが女神、洋子様!」
「バス停! バス停! バス停!」
「バス停! バス停! バス停!」
そして
北区警察署解放にて有名になり急成長した【バス停・オブ・ザ・デッド】は、今やクラン規模最大を誇る。多くの分派クランも生まれ、初期メンバーはその育成に忙しい。
源流と言える【バス停・オブ・ザ・デッド】はメンバー全てがバス停を使う近接戦闘特化クランとなっていた。その人数もクラン最大人数の一〇〇名を超え、新たな派生クランを多く作っている。【バス停・オブ・ザ・デッドⅡ】【バス停・オブ・ザ・デッド FINAL】【バス停・オブ・ザ・デッド:RE】【新バス停・オブ・ザ・デッド】【バス停・オブ・ザ・デッド極】……次はどんなクラン名にしようか迷っている最中だ。
有名になって大所帯になった【バス停・オブ・ザ・デッド】は破竹の勢い。正にバラ色のクラン人生――
(~♪)
スマホのアラーム音と共に目覚める
見慣れたクランハウスの天井。小規模クランの一軒家。なじんだ布団を跳ねのけ、立ち上がって頬を叩く。
「さ、今日も一日頑張るか」
【バス停・オブ・ザ・デッド】の一日が、今日も変わらず始まるのであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
北区警察署をめぐる
その時の動画が公開され――流石にAYAMEの事やユースティティアを通しての『あいつら』との会話は公開されないが――
ボス撃破は
そんなこんなで有名になった
「――そして誰もいなくなった」
あった。過去形だ。
多い時には一日に五〇人ほどいた入団希望者は、一か月後にはゼロとなっていた。入団を希望する者も、クランに入った人間も。
「ヨーコ先輩の教育に耐えられる人は、そうそういないと言う事です」
多くいた希望者の全ては、入団の際に行ったハンターの教育を受けた際に皆辞めてしまったのだ。
つまり――入団者ゼロ! 【バス停・オブ・ザ・デッド】のクラン人数は、四名のままである。
「いや、これでも加減はしたよ! っていうか『こういう感じで狩りをするんだよ』っていうのを示して軽くやってもらっただけじゃないか!」
「普通の人間は一歩踏み出す距離が少しずれただけなんて気にしないデスよ」
「間合いは重要だよ! あとすり足も大事だよ!」
間合いが一センチずれるだけで致命的になる事なんてザラなんだから。こと近接武器使う人なら気にしておくコトだってば。
入団希望者には『動画を見て近接武器に憧れました!』と言う人が多くいたので、じゃあ基礎の基礎から教えないとね、と言う事で軽くVR模擬戦と竹刀よる訓練をしてみたのだけど……。
「音子、知ってます。模擬戦の時、洋子おねーさん容赦ないから心に残るんです」
「ワタシはアレされるとキュンキュン来るんデスけどね。でも普通はトラウマもんデスよ」
「ヨーコ先輩にやられて乙女の顔をされるのは複雑な気分なのですが……。ともあれヨーコ先輩の教えは厳しいのレベルを通り越しているんです」
「それにしたって一人ぐらいは残ってもいいと思うんだけどさー!」
音子ちゃん、ミッチーさん、福子ちゃんに言われる
「もうクランに入団したい、っていう通知も来なくなったし」
「知れ渡ったんでしょうね。ヨーコ先輩の悪g……厳しさが」
「今福子ちゃん悪行って言いかけた!?」
「クラン規模拡大を阻害したんだから、組織面で見て悪行ジャネ?」
「……う……!」
ミッチーさんの言葉にぐうの音も出なくなる
クラン規模は入団している人間のハンターランクの合計が基準となる。【バス停・オブ・ザ・デッド】のハンターランク合計は83。100の大台に乗るには、もう少し足りない。そしてクラン規模が増えれば受けられるサービス……『AoD』でいえばクランスキルが増えるのだ。
規模が100になれば狩場でも消耗品が補充できる<
「とはいえ、ヨーコ先輩の動きを見て『自分もできる』と勘違いされれば大怪我の元です。最悪、狩りの際にこちらの足を引っ張りかねません。そういう意味ではマイナスと言えませんよ」
「わーん、福子ちゃん優しー!」
「ええ、ヨーコ先輩に憧れて後を追うのが許されるは私だけ。他の人にそんな真似はさせませんよ。絶対に」
「……わーい? やさしい、の、かな?」
薄く笑う福子ちゃんを見て、背筋がぞくりとする
「コウモリの君の病み部分はさておき、確かに戦力的には微妙な連中ばかりデシタからネ。ハンターランクの水増しとして在籍してもらうのもアレですし。
ま、終わったことは仕方ないデス。色々おざなりになってたけど、気分転換にスパ行かナイ?」
「すぱ?」
「
そう言えばそんなこと言ってたなぁ、と思い出す
ミッチーさんが手にしているのは、SPA苺華と書かれたチケットだ。苺華学園内にある療養施設である。無料開放されており、チケットとか意味はないんだけど、その辺は気分だとか。
「温泉……お湯沸かせるの?」
「ゾンビウィルス……おおっと、AYAMEに倣ってオウカウィルスっていうべきデスかね? ともあれ、それが動力源になってるんですヨ」
この島のインフラ関係は、皆ゾンビから奪った肉片から採取できるウィルスを元に動いている。どんなゲーム設定だよ、と思ったけどウィルスの秘密を聞いてしまえば……なおのこと分からなくなる。
「不死になれるかもしれないウィルスだよね。それが電気とかになるの?」
「生物の生態を動かしてるのは微弱な電気ヨ。ゾンビを動かしてたのがそれだとすれば……ぐらいにはありえそうネ。
実際、AYAMEのトンデモパワーの源がウィルスなんデスし」
「あー……」
ビルを吹き飛ばすAYAMEの力を思い出す。あれがウィルスの力だというのなら、発電機を動かすぐらいは普通にやれそうだ。かなり嘘くさい設定だけど、現実問題としてそれで動いているのだから、そこに疑問を挟むのは野暮だろう。
「温泉施設……音子、行ったことないです。おっきいお風呂があるんですか?」
「ええ。プールみたいに大きなお風呂や泡や電気で刺激してくれるお風呂もありますよ」
「電気……びりびり? おお、行ってみたいです」
「そうですね。少しは狩りから離れてゆっくりするのもいいかもしれませんね」
音子ちゃんも福子ちゃんも、気分はスパに向いているようだ。
「それじゃ、今週末にみんなで行こうか。金曜に学校終わって、その後で土日使ってゆっくりまったりしよう!」
「ええ、いいですわね」
「日本のことわざでいう所の温泉会デス!」
「あわあわ……面白そうです」
そうと決まれば準備は早い。昼間は学校に行って、夜はゾンビハンター。そんな変わらないサイクルの間に準備をしていく。二泊三日のお泊りと言う事もあってか、色々準備も大がかりとなった。……
「服はずっとスパで支給される浴衣を着るつもりだけど?」
「だからと言って服が一種類しかないのは問題です。あと日用品も」
「福子ちゃんはきっちりしすぎなんだよ」
「ヨーコ先輩がずぼらなんです! まったく、戦闘の準備はきっちりしてるのに」
なんてこともありながら、週末を迎えた。電車に乗って苺華学園まで行く。何処か未来めいた研究所のような学園だ。
「それじゃ、のんびりまったりしますか」
――もしこれがミッチーさんが言う所のフラグとなろうとは、
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