ボクのイベント後日談 そして見えないところで動くコト
「じゃあね、よっちー! また会おうねー!」
ユースティティアを倒した後、AYAMEは元気に手を振って去って行った。
「あ、カオスちゃんは返してもらうね。はっきり言って邪魔でしょ?」
「まあ確かに」
「ひでぇなお前ら!? いや、戻れるならそれに越したことはないか。またお前らを混沌に落とす日も――」
「体が復活できるとか何甘ったれたこと言ってるのよ。皆に見せて笑いものにしてあげるから。あ、そう言う事なんでよっちー達は安心してね」
「マジか、やめてくれぇ!」
そんな会話があったとか。ともあれ、
「よっちーがあやめちゃんの所に来たいのなら、いつでも歓迎するよ♡」
「ヨーコ先輩を勧誘するのはやめてもらえませんか、この色黒腹黒女」
「あは。コモリんからかうの楽しー。でもわりと本気。よっちー、あいつらに目をつけられたかもよ。気を付けてね」
あいつら……ユースティティアを通して会話してきた存在のことは皆に告げている。不死の研究をしていた者達。
『よくわからないけど、どうもボクは操られないらしい』とゲーム転生のことは伏せて説明したけど、福子ちゃんは色々察したようだ。
「遺伝子と魂の情報を持ってる人間相手とか、どうしようもないネ」
「ミッチーさんでもどうしようもないんだ?」
「相手が遺伝子と魂をどういう形で認識して、操作できるのかのカラクリがまるで分らないデス。日本のことわざでいう所の、手妻師ヨ」
「……多分手詰まりって言いたいんだろうなぁ」
扇で何かを仰ぐような動作をするミッチーさんを見ながら、ツッコミを入れる
「ま、どうにかなるなる! 今日はもう帰ろう!」
全力で問題を棚上げして帰路につく。
ともあれユースティティアは倒した。これで北区警察署の問題はおおむね解決するはずだ。解決していなかったら、明日の
結果を先に言えば、この予想は半分当たりで半分外れることになる。
ユースティティアはいなくなったが警察ゾンビがそれで消えてなくなるわけでもなく、残存兵力を削ぐためにもう少しだけ滞在することとなった。
最終的な【バス停・オブ・ザ・デッド】のMVC順位は四位。商品も際立ったものはなく、全てハンターランクのポイントとなる。まあ、一位の商品を貰ったとしても
何はともあれ、北区警察署襲撃事件は異例ともいえる速度で収束し、その後公開されたファンたんたちの動画により様々な反響が生まれるのであった。
……概ね
「……疲れたぁ……久しぶりの、クランハウスだぁ……」
「一度帰ってきましたけどね。暫くは休養したいです」
「イイネ! だったらスパ行かない? 大きいお風呂でのんびりするデス」
「音子、そう言う所行ったことないです。あ、でも猫ちゃんは入れませんよね……。はぅぅ」
北区から帰って来た
色々考える事はある気がするけど、何も考えずに眠りについた――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『ユースティティアがやられただと?』
『まだ十日も経っていないのにか』
『ハンターへの損害は中程度……。あれだけの兵力を投入してこのザマか。何があった』
『実験体A00001……AYAMEが出てきた』
『くそ、
『わからん。ハンターに協力する動きに見えた』
『馬鹿な、ありえない。
『不明だ。新たなケースとして登録する必要がある』
『不明点と言えば、
『それこそありえない。魂は不変だ。消滅こそあれど、魂が変わることなどない。肉体に入る魂は同一。
『だが、事実だ。学園都市に我々以上の魂工学者がいるとは思えない。自然発生の変異体としか思えない』
『結論を出すにはまだ早い。その個体を調査せねばならない』
『そうだ。結論を急くな。その存在が不死への手がかりになるやもしれぬ』
『そうだ、不死。永遠の存在。全てはその為にある』
『魂へのアプローチ。肉体死さえも凌駕する究極の不死』
『滅びぬ肉体ではなく、魂の移動による不死でもない。滅びの概念すらなくなる究極の不死。それこそが、我々の悲願。人類の永遠の夢』
『如何なる犠牲を払ってでも、そこに至るのだ――』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……本気ですか、会長?」
ハンター委員会副会長の井口は、委員長の提案した議題に眉をひそめた。
「うん。技術的には不可能じゃないだろう?
VR技術を使った仮想空間でのバトルロイヤル。クラン同士で戦う闘技戦。ハンターの実力を平和的に学園生徒達にアピールできるだろう」
笑みを浮かべながらハンター委員会会長の
「昨今盛り上がった動画によるハンターの人気を盛り上げる意味でも、ハンター委員会が主導となってこういった催しを起こすことは大事だと思うよ、樋口君」
「井口、です。
ですがハンター達全てが賛同するとは思えません。現状の狩り動画盛り上がりに反対するクランもいくつか見られます。自らの技術を見世物にすることを受け入れるクランがどれだけいるかとなると」
井口は実際にハンターに接した経験から、難色を示していた。
ハンターになる者は様々だ。その四割近くは自らの実力をわきまえずに死地に挑み、ゾンビとなった。逆に言えば今生き残っている者は、自らの実力を正しく理解している者達だ。
そう言ったハンタークランは自らの技術を秘する傾向にある。宣伝的に特色を出すことはあるが、それはあくまで外部向けの情報だ。実際に戦う姿をさらすハンターは少ない。情報は千金だ。ましてやそれが生存に関わる者なら、慎重にならざるを得まい。
「【バス停・オブ・ザ・デッド】が戦闘動画を公開するまでは、一部の目立ちたがりしか狩場の撮影許可は出しませんでした。ハンタークランは自らの戦闘情報を秘するのです。
こういった競技に参加するのはそう言った上位規模のクランではなく、名声やアピール目的の中堅もしくは下位ランククランしか――」
「それでいいんだよ。あくまで遊び。ショウタイムだ。ハンターのアピールになればいい」
意見する井口を押さえるように小鳥遊は告げる。
「ですが、こう言ったことに反対するハンタークランからの不満は――」
「井口君、納得してくれないか」
小鳥遊が井口に――名前を間違えることなく――命令するように告げる。
何かのスイッチが入ったかのように井口は震え、全ての意見は脳内から消える。会長の意見に納得する。
「――了解しました。そのように進めます」
「すまないね、苦労を掛けて。よろしく頼むよ」
一礼して部屋を出る井口を見送って、小鳥遊はため息をついた。
「ハンター、
そしてその中心にいるのが犬塚君、か。となれば彼女のことは正確に把握しておく必要があるね」
クラン同士のVR闘技戦。その計画書を見ながら小鳥遊は再度ため息をついた。
「最悪の場合、殺す必要もありそうだ」
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