ボクが見る夢……夢だから仕方ないんだけどさ!

「バス停の君とコウモリの君、なんでそんなにいいもの見つかるネ! 確率おかしいヨ!」

「まーまー。当初の目的は食料品だったんだから、MVPはミッチーさんだよ」

「そんなMVPいらないヨ! にゃあああああああああ、これが日本のことわざで言う所の物欲センサーですカ! アリエナーイ!」


 クランハウスに戻り、MIKADOでの戦利品――ありていに言えばガチャ結果――を確認し、その偏りに愕然とするミッチーさん。身を投げ出すように転がり、駄々をこねるように手足をバタバタさせる。

 単純な比率で言えば、ミッチーさんはほとんど食料品。ぶっちゃけ、8割コモンといった感じ。洋子ボクSRスペシャルレアUCアンコモンが二割ずつ。6割がコモン。なんと福子ちゃんはSSRスーパースペシャルレアを二つ引いたうえに、レアをいくつか引いている超大当たりだ。半分ぐらいがレア以上というすごい結果になった。

 

「確率おかしいネ! せめて一つぐらいはSRでてもいいと思うヨ! ウワーン!」


 うーん、高校三年生の米国グラマーハーフの駄々っ子。胸が盛大に揺れてるから、見る人が見たらそれなりに需要があるんだろうなぁ。……ないか。


「ですが、ロートンさんのおかげで食事事情はどうにかなりそうです。ありがとうございます」

「むー。それは確かにそうなんデスが……釈然としまセン」

「うんうん。その分、他の品物はミッチーさんが優先的に好きにしていいよ。たくさんチケット出してくれたんだしね」


 今回、個人の持ち物である『MIKADOチケット』をクランの為に使うことになった。その際に、条約と言うかアイテム配分に条件を付けた。

貴重な品物レアアイテムが出た場合、その振り分け比率はチケットを出した比率と同じにする』と言う事だ。比率としては300枚ぐらい出したミッチーさんが半分以上をもっていくことになる。

 ただまあ、


「ワタシ、ゴールデンバールとか貰ってもどーしようもナイヨ! ハンターランクのポイントにするしかないネ!」


 おおよその装備は本人のプレイスタイルに合わないなどで、役に立たないのである。ハンターランクのポイントにして、購買部からより高品質のモノを貰えるようにするしかない。

 稀に自分の装備にあったものが手に入るのだが……本当に稀な話だ。こうしたガチャの渋さも、『AoD』がすぐに終わった原因の一つなのだろう。


(集金しなければゲームの維持はできないとはいえ、集金が厳しすぎると客が離れていく。難しいものだよね、この辺は)


「ですから言ったじゃないですか。過度な期待は危険ですって」

「それでも賭けてみたくなるのが乙女心なのデスヨ! 引けるかもしれないじゃないデスカ。EFB!」

「……ああ、えたーなるなんとかぶりざーど? SSR0.5%の中でさらに10分の1を潜りぬければいけるんじゃない?」

「? 何ネ、その謎確率? とにかく次こそは……次こそはー!」


 普段おおらかなミッチーさんだけど、こういう時はそうでもないみたいだ。

 やっぱりガチャは魔性だなぁ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


(あ、これ夢だ)


 その日見た夢の中で、洋子ボクはそんなことに気付く。だだっ広い草原。抜けるような青空。そんな牧歌的な風景に立つ洋子ボクは――


「ねこみみー!?」


 頭にネコミミが生えていることに気付いた。いや、それだけではない。お尻には尻尾が、何よりも服を着ていなかった。


「え? え? ええええええ!?」


 しかし恥ずかしくない。何故ならネコだから。そうネコが服を着ないのは当然じゃないか。だから裸でも問題ない。おかしいと思うけど、そう思ってしまった。だって夢だし。


「そっかー。そうだよねー」


 頭頂部に生えた髪の毛と同色の桃色の耳。そして桃色の尻尾。動くかな、と思ったら思い通りに動いてくれる。楽しくて思わず何度も動かしてしまう。


「にゃーにゃー」


 思わずにゃーにゃーいっちゃうぐらいに、ネコだ。ネコの洋子ボク可愛い。愛くるしい。思わず地面を転がってしまうぐらいだ。なんでとか考えたらだめ。夢だしね。


「にゃ、にゃーん」


 ふと聞こえる声。そちらを見ると――頭頂部に銀色の髪と同色のネコミミを生やし、同じく銀色の尻尾を生やした福子ちゃんがいた。ネコだから全裸で――


(いやいやいやいやいやいやまって――ねこだからいいや)


「にゃおーん」


 そしてもう一つ聞こえる声。頭頂部に金色の髪と同色の以下略。金髪ネコなミッチーさんがいた。当然全裸で――


(あばばばばばばば! でもねこだし)


 福子ネコちゃんは背中にコウモリの羽根を生やし。まだ未成熟の身体だ。きゃしゃな体はまさに人形のよう。そんな彼女が愛くるしいネコミミを付けて、しなるような姿をしているのだ。でもねこだししかたない。


 ミッチーキャットはその暴力的なボディを見せつける様なポーズだ。その弾力は全てを受け止め、そして全てを包み込む。遠目で見てもそのおっぱい力を感じる姿である。ワイルドキャットとはまさにこのこと。


「なーん」

「にゃにゃーん」


 そして二匹のネコはゆっくりと洋子ボクの方に迫ってくる。舌を出しながら抱き着いて、洋子ボクの体を舐め始め――ちょちょちょっと待っ、それは色々マズ――


(これはネコの毛づくろい)

(ネコだから当然の行為)


 そっかー。そうだよねー。だいたい夢なんだから舐められたって別に、ひゃううん!?


「にゃー」

「なーん」


 二人の舌が体中を舐めている感覚。それが強く感じられる。

 福子ネコちゃんの舌は小さく、遠慮がちだけど愛おし気に舐めてくる。最初は遠慮がちだったのに、少しずつ熱を込めて強くなってきた。洋子ボクを抱きしめる力も、少しずつ強くなる。

 ミッチーキャットは、最初から暴力的。洋子ボクを逃すまいと四肢を使って動きを封じ、獲物を甚振るように支配してくる。上下関係を教えるような、荒々しい行方。屈服するまでやめないと言外に感じさせてくる。


(待って、待って、これ、結構ヤバい!)

(やわらかい。いいにおい。くらくらして、ぞくぞくする)

(右手を福子ネコちゃんに恋人握りでぎゅっと握られて、左手の手首を拘束するようにミッチーキャットに押さえられて、両方の太ももはお互いのふとももでからめとられて!)

(福子ちゃんのが熱い! ミッチーさんのが激しい! こんなの、つづけられたら、ボク、耐えられない――!?)


「うなー」

「んにゃ」


 二匹のネコは洋子ボクの体の隅々までにゃんにゃんしてくる。洋子ボクの体を十分ににゃんにゃんし、その反応を見てさらに強くにゃんにゃんしてくる。夢の中のはずなのに、現実のように洋子ボクの体はにゃんにゃんしちゃう。そして二匹の舌は洋子ボクの――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「にゃあああああん!」


 そんな声をあげながら、がばっと布団から目を覚ます。


(夢……? 夢だよね、ネコミミなんかないし)


 慌てて頭を触り、そこに何もないことを確認する。当然尻尾も。その事に安堵し、ため息をついた。


「あー、変な夢だった」


 夢なんだから何でもありなんだけど、夢とは思えないぐらいにリアリティがあった。目が覚めた今でも、二人に『毛づくろい』された感覚を思い出せる気がする。


「色々疲れてるのかなぁ、ボク。うん、寝直そう」


 スマホの時間を見れば、まだ夜中。もう一回布団に入って寝直しても、余裕はある。布団に入って、睡魔に身を任せて力を抜いた。


「そこはらめええええええ!」


 二時間後、人には絶対言えない内容の夢を見て、跳ね起きるのであった。

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