ボクが見る夢……夢だから仕方ないんだけどさ!
「バス停の君とコウモリの君、なんでそんなにいいもの見つかるネ! 確率おかしいヨ!」
「まーまー。当初の目的は食料品だったんだから、MVPはミッチーさんだよ」
「そんなMVPいらないヨ! にゃあああああああああ、これが日本のことわざで言う所の物欲センサーですカ! アリエナーイ!」
クランハウスに戻り、MIKADOでの戦利品――ありていに言えばガチャ結果――を確認し、その偏りに愕然とするミッチーさん。身を投げ出すように転がり、駄々をこねるように手足をバタバタさせる。
単純な比率で言えば、ミッチーさんはほとんど食料品。ぶっちゃけ、8割コモンといった感じ。
「確率おかしいネ! せめて一つぐらいはSRでてもいいと思うヨ! ウワーン!」
うーん、高校三年生の米国グラマーハーフの駄々っ子。胸が盛大に揺れてるから、見る人が見たらそれなりに需要があるんだろうなぁ。……ないか。
「ですが、ロートンさんのおかげで食事事情はどうにかなりそうです。ありがとうございます」
「むー。それは確かにそうなんデスが……釈然としまセン」
「うんうん。その分、他の品物はミッチーさんが優先的に好きにしていいよ。たくさんチケット出してくれたんだしね」
今回、個人の持ち物である『MIKADOチケット』をクランの為に使うことになった。その際に、条約と言うかアイテム配分に条件を付けた。
『
ただまあ、
「ワタシ、ゴールデンバールとか貰ってもどーしようもナイヨ! ハンターランクのポイントにするしかないネ!」
おおよその装備は本人のプレイスタイルに合わないなどで、役に立たないのである。ハンターランクのポイントにして、購買部からより高品質のモノを貰えるようにするしかない。
稀に自分の装備にあったものが手に入るのだが……本当に稀な話だ。こうしたガチャの渋さも、『AoD』がすぐに終わった原因の一つなのだろう。
(集金しなければゲームの維持はできないとはいえ、集金が厳しすぎると客が離れていく。難しいものだよね、この辺は)
「ですから言ったじゃないですか。過度な期待は危険ですって」
「それでも賭けてみたくなるのが乙女心なのデスヨ! 引けるかもしれないじゃないデスカ。EFB!」
「……ああ、えたーなるなんとかぶりざーど? SSR0.5%の中でさらに10分の1を潜りぬければいけるんじゃない?」
「? 何ネ、その謎確率? とにかく次こそは……次こそはー!」
普段おおらかなミッチーさんだけど、こういう時はそうでもないみたいだ。
やっぱりガチャは魔性だなぁ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(あ、これ夢だ)
その日見た夢の中で、
「ねこみみー!?」
頭にネコミミが生えていることに気付いた。いや、それだけではない。お尻には尻尾が、何よりも服を着ていなかった。
「え? え? ええええええ!?」
しかし恥ずかしくない。何故ならネコだから。そうネコが服を着ないのは当然じゃないか。だから裸でも問題ない。おかしいと思うけど、そう思ってしまった。だって夢だし。
「そっかー。そうだよねー」
頭頂部に生えた髪の毛と同色の桃色の耳。そして桃色の尻尾。動くかな、と思ったら思い通りに動いてくれる。楽しくて思わず何度も動かしてしまう。
「にゃーにゃー」
思わずにゃーにゃーいっちゃうぐらいに、ネコだ。ネコの
「にゃ、にゃーん」
ふと聞こえる声。そちらを見ると――頭頂部に銀色の髪と同色のネコミミを生やし、同じく銀色の尻尾を生やした福子ちゃんがいた。ネコだから全裸で――
(いやいやいやいやいやいやまって――ねこだからいいや)
「にゃおーん」
そしてもう一つ聞こえる声。頭頂部に金色の髪と同色の以下略。金髪ネコなミッチーさんがいた。当然全裸で――
(あばばばばばばば! でもねこだし)
福子ネコちゃんは背中にコウモリの羽根を生やし。まだ未成熟の身体だ。きゃしゃな体はまさに人形のよう。そんな彼女が愛くるしいネコミミを付けて、しなるような姿をしているのだ。でもねこだししかたない。
ミッチーキャットはその暴力的なボディを見せつける様なポーズだ。その弾力は全てを受け止め、そして全てを包み込む。遠目で見てもそのおっぱい力を感じる姿である。ワイルドキャットとはまさにこのこと。
「なーん」
「にゃにゃーん」
そして二匹のネコはゆっくりと
(これはネコの毛づくろい)
(ネコだから当然の行為)
そっかー。そうだよねー。だいたい夢なんだから舐められたって別に、ひゃううん!?
「にゃー」
「なーん」
二人の舌が体中を舐めている感覚。それが強く感じられる。
福子ネコちゃんの舌は小さく、遠慮がちだけど愛おし気に舐めてくる。最初は遠慮がちだったのに、少しずつ熱を込めて強くなってきた。
ミッチーキャットは、最初から暴力的。
(待って、待って、これ、結構ヤバい!)
(やわらかい。いいにおい。くらくらして、ぞくぞくする)
(右手を福子ネコちゃんに恋人握りでぎゅっと握られて、左手の手首を拘束するようにミッチーキャットに押さえられて、両方の太ももはお互いのふとももでからめとられて!)
(福子ちゃんのが熱い! ミッチーさんのが激しい! こんなの、つづけられたら、ボク、耐えられない――!?)
「うなー」
「んにゃ」
二匹のネコは
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「にゃあああああん!」
そんな声をあげながら、がばっと布団から目を覚ます。
(夢……? 夢だよね、ネコミミなんかないし)
慌てて頭を触り、そこに何もないことを確認する。当然尻尾も。その事に安堵し、ため息をついた。
「あー、変な夢だった」
夢なんだから何でもありなんだけど、夢とは思えないぐらいにリアリティがあった。目が覚めた今でも、二人に『毛づくろい』された感覚を思い出せる気がする。
「色々疲れてるのかなぁ、ボク。うん、寝直そう」
スマホの時間を見れば、まだ夜中。もう一回布団に入って寝直しても、余裕はある。布団に入って、睡魔に身を任せて力を抜いた。
「そこはらめええええええ!」
二時間後、人には絶対言えない内容の夢を見て、跳ね起きるのであった。
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