ボクらVS狗岩+テントウムシ……はぁ!?
「一気に行くよー!」
その後も
こういう時はダメージを受けない事を考えて、入り口付近で控えておくのがセオリーだ。事実、他のクランはメインのメンバーは入り口付近で待機している。狗岩登場のサインと同時に、動き出すのだろう。
だけど、
「他のクランがいない間にドロップ品とか稼いでおかないとね! あわよくば、武器強化の加工品が手に入るかも!」
そんな物欲まみれな理由でもあった。
勿論それだけではない。
「ゾンビを狩るのはハンターの務め。それは大物ではないと言う理由で活動を控える等、笑止ですわ。常に全力で進むのです」
「イエスイエス! 取れる時に取るのは正しいヨ。濡れ手にバブルデス!」
福子ちゃんやミッチーさん。二人の実戦動作の確認もある。訓練して身に着いた技量がどこまで通用するか。それを体感してもらうのだ。二人は水を得た魚のようにフィールドで狩りを続けていく。
……その、僕自身もここまで効果あるとは予想外。本当に追い抜かれそうでうれしいやら怖いやら。
「ホイ! 攻撃見え見えネ!」
事、ミッチーさんは見違えるぐらいに回避術が高まっていた。チェンソーザメの時は十条の命令もあって防衛に回っていたけど、ここまで動けるようになるとは。
「すごいよミッチーさん! ほぼノーダメージじゃん!」
「当然ネ! こんなのバス停の君の訓練に比べればスロウリー! 挙動見て回避余裕ヨ!」
「ええ。ヨーコ先輩の訓練に比べれば、この程度のフェイントはむしろ猶予時間ですわ!」
複数の犬ゾンビに過去かれても、パニック一つ起こすことなく対応していく二人。うんうん。大したもんだ。
「……なんなんだ、あいつら。あの数に囲まれて大丈夫なのか?」
「ありえないだろう? <ESPバリア>も<
そんな
「おーい、一緒に狩ってく?」
軽く手を振る余裕すら、
「いや。苦戦しているようなら手助けしようと思ったけど、大丈夫なようだな」
「いい狩りを」
相手が危険な時以外の横殴りはマナー違反。そんなハンターのマナーに従って、彼らは手を振り去って行く。
「いい調子だね。結構ドロップ品も集まったんじゃない?」
「十条チャン、きちんと運ぶネ」
「わ、分かっている! ……しかしさっきのハンターじゃないが、よく対応できるものだな」
<
「あれぐらい慣れれば余裕だよ。キミも訓練を続けていればできたのにね」
「お断りだ。ミーはあんな変態的な動きなどしたくない。優雅に、そして美しい超能力ハンターを目指すのだ!」
そんなことを繰り返しているうちに、村全体に咆哮が響き渡った。
<ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!>
音そのものが衝撃となって村を揺るがす。同時に月を隠すように犬型の何かが跳躍し、村のどこかに着地した。
「あれが……狗岩。『
「動きもあれの比じゃないからね。それじゃ、行くよ!」
「アイアイサー!」
狗岩が着地したと思われる地点に向かう
「生き残っていたか、【バス停】」
「逃げ回っていた……わけじゃないようだな」
並走する他のクラン――【ヴァンキッシュ】のエンブレムを持つ生徒から話しかけられる。
「悪いが狗岩は渡さないぜ」
「それはこっちのセリフだよ! 横殴り禁止、とか言わないよね?」
「当然。ハンターのルールに則って、その上で狗岩は【ヴァンキッシュ】が倒させてもらう!」
横殴り――ピンチの時以外は誰かが戦っているゾンビを殴ってはいけないというルールは、ボスゾンビに関しては例外となる。相手が一体しかいないと言う事もあるが、そうしなければ倒せないほどの強さでもあるのだ。
で、皆で殴った場合は最もダメージを与えた者がMVP――そのボスを倒した栄光を得られる。具体的にはボス固有のドロップアイテムなどだ。狗岩の場合は『神通石』――高品質な弾丸を作り出せる材料になる。
「MVPアイテムは要らないんだけどね。でも、挑まれたのなら勝つ!」
「ええ。この『
「ワクワクするネ!」
そして
既に数名のハンターが交戦しており、銃声と怒声。そして獣の咆哮が響いていた。面で包み込むように打ち放たれた弾丸を岩の皮膚で弾き、鋭い爪と牙でハンターたちを蹴散らす狗岩。
ハンターも関節や目と言った弱点を攻めながら、傷ついた人間を後ろの下がらせて第二部隊が前に出る等して対応していた。
「お邪魔しまーす!」
一応断りを入れながら、狗岩に殴り掛かる
「うっは! ヘイトこっち向いたかな!」
狗岩はこちらに顔を向け――ると同時に爪を振るう。右から二つ、左から一つ。緩急入れぬ連続攻撃。右の一つを転がって躱し、左からの斬撃をバス停で防御する。そして三つ目ともいえる右の攻撃を、バス停を振るって切り払った。
「ほらほら、こっちだよ!」
言いながら横にダッシュする
「これでも喰らうネ!」
ミッチーさんが近づいて、毒ガスを噴射する。意識がこちらに向いていたこともあり、狗岩はまともにガスを喰らってしまう。鼻先を激しくこすりながら地面を転がる狗岩。だが――
「ミッチーさん、5の方向!」
「ッ! 危なかったね……!」
悶えながら振るわれる狗岩の噛みつき攻撃。それをなんとか避けるミッチーさん。反応が遅れれば、はらわたを食い破られていたかもしれない。
「
そして悶える狗岩に向かって飛ぶコウモリの群れ。言うまでもない、福子ちゃんだ。動きた泊まった瞬間を狙ったのか、待機させていたコウモリも一緒に襲い掛かる。更に、
「――
舞うように奮われる福子ちゃんの剣撃。走りながら命令を放っていたのか、コウモリの襲撃とほぼ同時に剣を振るう。
うわぁ、
「一を知って十を得る。ええ、当然ですわ。それがこの私、『
貴方を超えると言う言葉、その誓い。嘘偽りではないと知りましたか?」
ふふ、と微笑む福子ちゃん。
いやホント、僕が教えることなんかすぐになくなりそうだ。
<オオオオオオオオオオン……!>
立ち直った狗岩が跳躍する。状況を仕切り直し、村のどこかに着地したようだ。
「おいおいマジか。【バス停】の奴ら、本当に狗岩を倒しそうだぞ」
「はっ、負けてられっかよ。――おい、狗岩は村長の家近くに行ったようだぜ」
【ヴァンキッシュ】のハンターたちは、
「いいのかい? そんなこと教えると、ボク等が狗岩をあっさり倒しちゃうぞ」
「ぬかせ。【ヴァンキッシュ】を舐めるなよ。むしろいいハンデだ。」
「ハンター権に関しては俺らも思う所があるからな。【
――まあ、それと
「そりゃどうも!」
言ってサムズアップする
「ふ、愚かですわね。ですがその正々堂々たる態度は
「これが日本のことわざで言う所の『努力・友情・勝利』の三本柱ですね!」
「……まあ、少年漫画っぽい気持ちの良さは間違っていないのかな?」
首を傾げながら、村長家の方に向かう
テントウムシ?
「ひぃ!? ……あうあうあうあう……!」
巨大ともいえるテントウムシの足の動きに、福子ちゃんが悲鳴を上げる。中二病モードが解除されたのか、素に戻っていた。
「なんだぁ? 戌岩村は犬ゾンビしかいないはずなのに――まさかこいつは」
【ヴァンキッシュ】のハンターも、この異常に顔を青ざめていた。
「『
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