ボクと吸血妃の疑似パーティプレイ
「えーと……あーでるちゃんでいいかな? ドイツ語分かんないんで」
「
胸を張って答えるアーデルちゃん。上から目線に見えるけど『吸血鬼の貴族を演じている』と思えばむしろ可愛く見える。
「んじゃアーデルちゃんに質問。なんでこんな所に居るの? キミの学園……光華学園からわざわざこんな所に来るなんて」
この前であった時も疑問だったけど、彼女がこの駅に居るのは少し疑問だった。
ハンターランクをあげたいのなら、わざわざ橘花駅まで遠出しなくてもいいのだ。光華学園の近場にも駅がある。なのにわざわざ電車に乗ってここまでくる理由はなんなのだろうか?
「そう。それは
「……あー。『鬼の角』か」
『鬼の角』……『
「そうね。それは否定しないわ。でも私がヤツに挑む理由はそれだけじゃないの。
私の
「しゅべ……? ふるーふ?」
「ゾンビウィルスという
言って泣き崩れるアーデルちゃん。
(んー……つまりあれかな? 1STキャラがカミラで、『
そんな所かな、と辺りをつける僕。
『AoD』の課金要素は、主に死亡のペナルティ回避だ。
この『AoD』は、死亡したらゾンビとなってフィールドを彷徨う。その際、装備などもそのままゾンビが使うことになるのだ。
だが課金することでゾンビ化したキャラが持っている装備のコピーを、ホームのボックスに戻すことが出来るのだ。また。クローンを作ることでキャラそのものが復活できるのである。
(そんな露骨過ぎる課金要素が廃れた原因なんだよね。そりゃ、タダでゲーム運用はできないだろうけど、世紀末な難易度とゲーム仕様でこの課金は、ねぇ)
僕は現実世界での出来事を思い出していた。銃以外は死ねというゾンビ戦の仕様。滅茶苦茶な戦闘バランス。そしてゾンビ化と言うデスペナと、それをリカバリするための課金要素。
運営はそれでうまく回ると信じていたのだろう。キャラが死ぬ度に金が入る。そんな態度が客が離れる原因となったのだ。
まあ、それは過去の話。そしてゲーム内での話。
今目の前で唇をかんでいるアーデルちゃん。
「そっか。それじゃ一緒に行かない?」
「……駄目よ。これは私の戦い。それに闇の血が貴方を傷つけてしまうわ」
共闘しようと持ち掛けるが、あっさり断られる。
――うん。中二病の仕様だね、これは。中二病状態が発動している限り、パーティが組めないようになっているのだ。
「パーティが組めると、パーティチャットとかで連絡が取り合えるんだけど……まあそれが出来なくてもなんとかなるか」
「なんとか? やめなさい、
今アーデルちゃんスマホでドイツ語辞典開いてたんだけど、見なかったことにする僕。……ってことは生粋のドイツ人じゃないんだ。
「でもアーデルちゃん一人で『
「大丈夫よ。私にはこの子達がいる」
言って彼女はコウモリの眷属を呼び寄せる。攻防一体となる動物使い。それは確かに万能ともいえるだろう。だが――
「『
『
「ならなおの事よ。貴方は巻き込めないわ」
「あはははは。だよねー」
いうまでもなく、
「でもついていく。どの道『
「分からないわね。なんでそんなことをするの?」
「キミが優しくていい子だからだよ。ボクはそういう子を助けることにしてるんだ!」
指を立てる
「
「初めて会ったとき、ボクを含めて助けてくれたじゃないか。それに今だって、巻き込まないようにしてくれている。キミはそんな優しい子だよ。
まあ、その優しさを裏切るんだけどね!」
言って腰に手を当てて胸を張る
「分かった。貴方、
「なーる? よくわからないけど納得してくれたのなら問題なし!」
「勝手にしなさい。言うまでもないけど、パーティなんか組まないから」
うんうん。組みたくても組めないもんね、性格上。
ともあれ、許可と言うか同意は得た。一緒に『
「先陣はボクが切るから、アーデルちゃんはその後をついて来て。
そっちの攻撃にボクが合わせるから!」
「ふん。精々私の子達に巻き込まれないようにするのね」
「はーい。努力します!」
言って指を立てる
――一応言うと、『AoD』は
(ないんだけど、ゾンビと戦っている時に
一秒の停滞が死を招く。それが
そんなわけでアーデルちゃんの攻撃は、全部回避しないといけない。最も、致命的な巻き込みはしないんじゃないかな、っていうポジティブな思いもある。
「ま、なんとかなるか!」
言ってマフラーで口を覆う
「一体目! すぱーん!」
振るわれるラケットを上半身をかがめて回避し、そのまま突き進む。そのまま一気に――
「甦れ、闇の眷属。血の饗宴をここに開催しよう――」
アーデルちゃんの言葉。それを聞いて
「
(うっはー。前見た時もそうだったけど、かなりの実力だね! 十匹近いコウモリを無駄なく割り振ってる!)
一撃でゾンビを葬るアーデルちゃんの采配に舌を巻く僕。不慣れなテイマーはそこで全部の眷属を解き放ち、防御がおろそかになるのだ。
だが、ゾンビを倒すのに必要なだけの眷属を攻撃に回し、残りは何かあった時の予備として防御に回している。その采配の上手さは、一朝一夕で身につくものではない。かなりの鍛錬を積んだのだろう。
「いけるいける! ナイスだよ、アーデルちゃん!」
「当然よ。『
ほどなくして、二階を突破する
さて、鬼退治と行きますか!
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