3話_大切な少年ともらった命
「わかった。貴方はりんって人から死にかけた時に命をもらったと」
「そゆこと」
全て話終わった俺は今後どうしようか考えていた。
こいつは俺が命を交換するつもりというのは恐らく予想されているはずだ。なら確実に止められる。
「なんか感動する話ねぇ」
「だから今度は俺がお前を救うばんなんだ」
「ダメよ」
「そういうとは思ったさ」
だからこそデートをこの日にしたのさ。
「なら貴方はそのもらった命でその人が満足するだけ生きて行きなさい」
「いいや、俺はお前を救いたい」
「なら、私は貴方のわからない場所に逃げるわ」
「あ、おい...!!!」
彼女は気づけばもう見えない所にまで走っていった。
追いかけられなかった。
いや"追いかけなかった"
俺だって...怖い
死ぬのが怖い。
死にたくない。
もらった命だ。
大切な人が勇気を振り絞ってくれた命なんだ。
怖い。
怖いんだよ。
笑えるよな。あの空気を読まなくて人の気持ちもろくに考えずに自分勝手に行動する俺が、人を救うなんて。笑わせるなって話だよ。
でも、でも...!!!だからこそ...!!
あの関わった日から...!!!
あの、仲良くなった日から...!!!
あの、お前の病気を知った日から...!!!
お前を救いたいって思ってたんだ...!!!!
俺は地を蹴って走り出す。
ものすごい勢いで、もといた場所から離れる。
彼女の行き先は大体目星はつく。
私には、家族がいない。
母親父親どちらとも交通事故で死んだ。なんとも悲しい話だ。
でも私にも生きたいと思える時があった。
それはミヅキと話している時だ。
生きる意味を失って自殺をする場所を探すため、病院から抜け出していた時に出会ったんだ。
初めはぶつかっただけ、
次に会った時は、
かくまってもらっだけ、
なのに、なぜかそれだけなのにすごく喋りやすくて、なごまされた。
そして、仲良くなって、こんな楽しいはずだったデートにも一緒に行けて、こんな幸せがあったあとなら死んでも悔いは無いと思ってたのに...
私は走る。
あのぶつかった日から随分足が重くなった。そろそろ死ぬ日が近づいていているのだろう。もう、数日後には歩くことすら難しいかもしれない。でも、走るのだ。
走らなければならないのだ。
あの人には生きてもらわなければならない。
この判断が正しいのかは分からない。
間違っているかもしれない。
私だって、生きたいんだ。
死ぬのが怖いんだ。
もっと生きて、ミヅキともっとお話しして
いつかは付き合ったり...してみたかった...
でも私には生きる道は与えられなかったのだ。
あいつには家族がいない。なら行くところは限られている。桜のあの場所か病院だ。
「いるとおもったんだがな...」
息を切らしながら俺は桜の場所に来ていた。
俺がデートをこの日にしてほしいと少し頼んだのには理由がある。
それは彼女は今日が節目で体調が急変するからだ。
能力を貰った僕は人の死ぬまで日が分かる。
そして彼女が明日に死ぬということが分かって今日にしたのだ。
だから、今日見つけないとまずいのだ。
「なら、病院だな」
ハハハ、馬鹿みたいだな。
数ヶ月前には人と関わるのを拒んでいた俺が人を助けたいなんて
やっぱり関わるべきじゃなかったのかもな。
直感が関わるなって言ってたのにな。
「こいつと関わるとなにかが変わってしまう」
って分かってたのにな...
「守るべき命を、人を守るために使っちまうなんて、馬鹿だな」
さて、天国でなんとりんに謝ろうか。説教されるのだろうか。はたまた褒められるのだろうか。
やっと、病院についた。
悪化すると言っても今日の夜中だ。だから大丈夫。
見つけされすれば、あとは夜中まで待機して、能力を使い命を入れ替え俺は去る。それだけだ。
別れなんてすると虚しくなるならな。
「いたな」
病院の外の木に登り彼女が病院にいることは確認できた。
ならあとは...
病院にいればあの人は入ってこれないはず、ドアの鍵は既にしめた。
余命宣告は2か月後と言われている。それまではなんとか逃げ切らないといけない。
グッーー
これは病気の痛み?
それとも...
ポタポタと顔から流れる得体の知れない液体を見て、
立ち上がり鏡を見て、
ようやく自分が泣いていることに気づいた。
きっと...自分が生きれない人生だったことを悔やんでるんだな...
意識的に分かった。
グッーー
瞬間体の力が抜け地面に倒れこんだ。
アハハ...これもそうなのかな...??
遠のいていく意識の中、私は叫んだ。言葉にならないのに。
助けて...!!!
と。
あいつは倒れた。
よし、予定通り
ドアの鍵を閉められるというのは予想はついていた。
だから俺はあらかじめ窓の鍵を壊しておいたのだ。
ガラガラガラと窓を開け、
彼女をベッドに寝かせて、あとは命を入れ替える。
「さぁ、命を入れ替えろ」
ふわっと白い光が宙を舞い、俺と彼女の周りを覆った。
瞬間、俺は倒れこんだ。
幸い意識はあるが数時間後には確実に死ぬと分かるレベルだ。
今にも死にそうな体を無理やり起こし、枕の横に手紙を置き、窓から飛び降りた。
やべ...着地のこと考えてなかったな...
バタンと地面へ倒れこむ。
おそらく左肩が骨折したな...
まぁいい。今はとにかく走ろう。
「さて、どこで死ぬかな」
あの場所しかない。と僕は言葉をこぼしあの場所へ向かった。
桜が満開で一本だけ立っている場所。
名もなき場所。
ここで、いいな...
目覚めた時には、体はスッと軽々と起き上がり横には手紙が置かれてあった。そう長くは寝てないようで今から日が昇るという感じだった。
まさかなっと思い手紙を見た瞬間
私はドアの鍵を開け
病院を抜け出した。
あの人がどこにいるかは分からない。でもあの場所しかないはずだ。桜が咲いたあの場所へ。
走れ。とにかく走れ。
この際生きているか死んでいるかはいい。
とにかく走れ。
会いたいんだ。
でも、そう考えていても走りながらに涙は漏れていて、
「やっと...ついた」
「アハハ...」
死ぬんならもっとわかりにくい場所で死になさいよ...
もう手は冷たくて、呼吸もしてなくて
木に寄り添ってまるで眠るかのように死んでいた。
そう、彼はもうこの世にはいなかったのだ。
私も死にたい。
死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい。
そう願っても私には生きる道があって、この人にはなくて、
もう...なんでよ...!!!
なら、生きるしかないのだろう。
この人はもういないのだ。
なら意思を受け継いで生きるしかないのだ。
さよなら、大好きなミヅキ
そして、ありがとう
私はもらった命を胸にこれからも生きてゆく。
強く。強く。
END.
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