第18話 悲しみのSL少女
「私がガパオ流ムエタイの正統継承者! 一子相伝にして最強のアハ殺拳! 世紀末アハ救世主! タイキック侍少女、真理亜! ガパオの掟は私が守る! アハッ!」
「こんな姉でごめんなさい。」
真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中!
「次は新橋村でござる。」
「ござる、ござる。そうでござる。」
真理亜と楓の大神姉妹は次の目的地まで、野盗や陸にあがった海賊と戦いながらレベルアップしながら、途中のお茶屋さんでお茶と団子食べて回復しながら山の手街道一周の武者修行の旅をしている。
「弟子募集! 偽救世主より!」
遂に弱い人の心を知るために弟子の募集を始めた。
「弟子にして下さい!」
真理亜の元に弟子志願の者が多数やってきた。
「それでは履歴書の提出をお願いします。」
「え?」
救世主の元に弟子を志願してやって来る野党や山賊、海賊たち。しかし履歴書を書ける者は一人もいなかった。
「も、文字が書けない・・・・・・。」
同じように弟子志望の侍や少年も文字をかける人間がいなかった。
「弟子を取るって難しいのね。」
「アルバイトの求人を出しても人が集まらないって感じ。」
「はあ・・・・・・。」
アハ姉妹は珍しく弱気になっていた。
「文字を書いたり読んだりできる私たちって・・・・・・偉かったんだわ! アハッ!」
「そうね。私たちには当たり前でも、文字を書く、読むことができるって、こんなにも幸せなことだったのね。アハッ!」
少し国語の授業と漢字が好きになった大神姉妹。
「でも困ったわね。弟子ができない。」
「う~ん、どうしよう?」
その時だった。
「ワンワン。」
子犬が吠えてきた。
「んん? 犬か・・・・・・はあ!? こいつも字が書けない!?」
「そうね。同じ字が書けないのなら犬でもいいかも。アハッ!」
人間が文字を書けないのなら、犬と同じである。
「今日から私たちがおまえの飼い主だ!」
「弟子よ! 弟子! お姉ちゃん! 少しズレてるよ!」
「アハッ!」
こうして子犬を弟子として飼うことにした。
「ワンワン。」
何も分かっていないが喜んでいる犬。
「じゃあ、名前を付けないと・・・・・・こいつの名前は、カール・ハインツ・バイエルン・シュナイダーだ!」
「却下! サッカー選手にいそうな名前だわ。」
「じゃあ、楓。あなたならどんな名前にするのよ?」
「名前がアハだと、アハ神様に失礼だから、近い所で・・・・・・アパでどう?」
「それこそ、どこかのホテルにありそうな名前よ。」
「あ! 良いことを思いついた。時代劇だから宿屋さんを展開して会社を大きくしていくっていうのはどう?」
「どういうこと?」
「アパホテルにちなんで、アパ宿屋よ。一大宿場町を作って見せるわよ! アパ宿屋のサービスは、アパ教徒様は宿泊費を半額にするわ! アハッ!」
壮大なスケールのアパ宿屋計画。
「そうか! 形は変えただけで同じなんだわ! 現代のホテルは宿屋。牛丼屋とかラーメン屋とか現代で細分化された飲食店は、時代劇では定食屋だった。」
「現代の電気は無いから、時代劇ではロウソク屋だったみたいな。」
「世界が広がっていく! アハッ!」
空想を創造していく大神姉妹。
「ワンワン。」
その時、弟子が鳴いた。
「アパ。ワンワンじゃないでしょ。アハアハって鳴きなさい。」
「ワン~?」
犬に鳴き方を変えろというのも無理難題である。
「アハアハ。」
「よし! 偉いぞ! アパ! 良く鳴けた! アハッ!」
「アハアハ。」
犬は犬だが優秀な犬であった。
「助けてください!」
その時、第一新橋村人がやって来た。
「はい。今日の悲劇はなんですか?」
「悪代官が村人に機関車の着ぐるみを無理やり着せるんです。」
「分かりました。悪代官を倒しましょう。」
悪代官にSLの着ぐるみを着せられる悲劇的伝説であった。
「アパ! 弟子として悪代官と戦ってきなさい!」
「アウン?」
しかしアパは何も分かっていないようだった。
「しまった!? 私は犬語が分からない!?」
「犬語って何よ?」
困惑する大神姉妹。
「アパ! 悪代官と遊んできなさい!」
「ワンワン!」
弟子の子犬アパは代官所に走っていった。
「アパは人間の言葉が分かるのね!? なんて賢い犬なのかしら。アハッ!」
「しかも戦うでは動かないで、遊んで来いと言うと動く。素晴らしい弟子だわ。アハッ!」
大神師匠たちも大絶賛である。
「新橋村の悪代官を倒しました。」
テロップが出る。
「やったー! 新橋村! 解放したぞ! アハッ!」
「優秀ね! 私たちの弟子は! アハッ!」
真理亜と楓は弟子のアパの初勝利を喜んだ。
「帰ってきたら、いっぱいドックフードを食べさせてあげよう。アハッ!」
しかし、いつまでたってもアパは戻ってこなかった。
「どうしたんだろう? アパ。」
「まさか!? 悪代官と相打ちに!? 若しくは交通事故!? 若しくは流浪の旅に出たとか!?」
不安がよぎる大神姉妹。
「ワンワン。」
結構、ただの方向音痴だったりする。
「アパよ。安らかに眠れ。」
「君のことは忘れない。」
初弟子、アパのお墓の前で祈り手を合わせて拝む真理亜と楓。
「さあ! 次は有楽町村よ!」
「弟子との別れという悲しみを乗り越えて前に進む!」
大神姉妹の山の手街道一周の旅はまだまだ続く。
つづく。
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