第12話 悲しみの反物少女

「お友達を大切に! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 真理亜、お友達70億人キャンペーン実施中!


「次は五反田村でござる。」

「お姉ちゃん、まだ「ござる」は続けるのね。」

 この物語は時代劇である。時代劇といえば「ござる」である。

「目黒村も呪いのサンマから解放したし、私の世紀末アハ救世主伝説も順調だな。アハッ!」

「そうね。だいぶん形になって来たわね。きっと五反田村でも何か困ったことや、悪い奴がいるから、そいつを倒して解決しましょう! アハッ!」

 物事が順調だと機嫌が良いので、真理亜と楓の姉妹の中も良くなる。

「大変だ! 大変だ!」

 その時、慌てて飛脚が走ってきた。

「どうしたんですか?」

 声をかけてみる真理亜。

「この先の五反田村で反物の化け物が出たんだってよ!?」

「なんですと!?」

「そうか! 五反田村っていうくらいだから、反物の村に違いない!?」

 勝手な想像である。

「今度は反物少女を退治だ! アハッ!」

「おお! お友達をいっぱい作るぞ! アハッ!」

 真理亜と楓は道中、山賊、盗賊、野盗、陸の上の海賊などを倒しレベルアップしつつ、茶店でお茶とお団子を飲食して、噂の五反田村にたどり着いた。

「ここが五反田村か!?」

「毎回、このパターンなのね!?」

 二人が見た五反田村の村人たちは全身に反物を巻いている反物ミイラばかりだった。

「トイレットペーパーを撒くよりはいいけど、もう少し何とかならなかったのかね? 浅草とかみたいに普通に着物を着るとかさ。」

「きっとトンキでコスプレ衣装を売って丸儲けする気よ!」

 あくまでもビジネスライクな大神姉妹。

「あの・・・・・・。」

 その時、一人の反物ミイラ少女が声をかけてきた。

「出たな! 反物ミイラ! おまえが反物の妖だな!」

 鋭くツッコミを入れる真理亜。

「いや、それは目黒の話だろうが。まったく、お姉ちゃんはおバカなんだから。」

 まだ子供な楓。

「なぜ分かった!? 五反田少女の私が、反物少女だと!?」

 五反田少女の正体は、呪いの反物少女だった。

「え!? まさかの大正解!?」

「やったー! これでおバカ返上ね! アハッ!」

 毎回、このパターンでもいいかも。アハッ!

「聞いてください。実は・・・・・・。」

 五反田少女が話を始める。

「元々は綺麗な反物だったんですが、田んぼの妖怪が嫉妬して、反物を5つに引き裂いてしまったんです。そのために発生したのが反物ミイラ少女たちです。」

「おお!? 五反田の命名の理由は、こうだったのか!?」

「なんという悲劇的伝説ね!?」

 悲しみの五反田村。

「私たちで田んぼの妖怪を倒しましょう!」

「世紀末アハ救世主伝説の始まりね。」

 立ち上がる真理亜と楓。

「ありがとうございます。これで五反田村も救われます。」

 感謝する反物ミイラ少女。

「でも田んぼの妖怪を倒して、5つに引き裂かれた反物が1つになったら、一反田になるのかしら?」

「お姉ちゃん、そこは置いておこうよ。」

「アハッ!」

 空気が読めない真理亜は笑って誤魔化す。

「田んぼの妖怪はどこにいるのかしら?」

「田んぼじゃない?」

「はい。田んぼに案内します。」

 反物ミイラ少女の案内で田んぼに移動する。

「田んぼ! 田んぼ! 田んぼを増やして村を五反田から五田反に変えてやる!」

 田んぼ少女の切ない野心であった。

「見~つけた! 田んぼ少女!」

 真理亜たちは田んぼ少女を見つけた。

「見つかっちゃった!? アハッ!」

 意外にも田んぼ少女はノリが良かった。

「田んぼ少女! 五反田村にかけた呪いを解きなさい! アハ神に代わってお仕置きよ! アハッ!」

「アハ神!? その笑い声!? まさか!? 君もアハ教徒!?」

「田んぼ少女!? あなたもしかしてアハ教信者!?」

 なんと田んぼ少女はアハ教徒であった。

「アハッ!」

「アハッ!」

 アハッ! だけで成り立つ会話。まさに暗号。

「あの人たちは何をやっているんですか?」

「アハ教徒同士はテレパシーで会話ができるのよ。」

 異様な光景を見た反物ミイラ少女。

「田んぼ少女は良い子じゃない! 五反田村はアハ神に捧げられたのよ! アハッ!」

「反物ミイラは面白いだろ? 笑いで世界を支配する! アハ神様の思想にそっているのだ! アハッ!」

 そしてお互いに理解し合う真理亜と田んぼ少女。

「よし! 五反田も平和になったし、次の大崎村に向かうとするか!」

「良くない。お姉ちゃん、少しズレてるよ!」

「アハッ!」

 妹に怒られる姉。

「あの田んぼ少女さん、かくかくしかじか。」

 楓は田んぼ少女に事情を説明する。

「そうだったのか!? 知らなかった!? 私はてっきり反物が悪者で、田んぼを傷つけていると思っていたよ!?」

「それじゃあ、反物とも仲良くしてくれるんですね?」

「それは断る。」

「なぜ!?」

「だって、このまま反物が勢力を広げたら、開発工事ばかりで田んぼが無くなっちゃうもん。」

 切実な田んぼの訴え。

「もし反物ミイラの呪いを解きたければ、私を倒していきなさい!」

「では、そうさせてもらうわ。」

「え?」

「ガパオ流奥義! トム・ヤム・クン!」

 ただのタイキックである。

「ギャアアアアアアー!? な、なぜだ? 私たちは同じアハ教徒のはず?」

「アハ教徒は笑いで世界を支配する宗教。おまえみたいな私利私欲と既得権益を守るために人々に呪いをかける奴などアハ教徒破門だ。アハ神様に代わって成敗したまでだ。」

「そうか・・・・・・私はアハ教徒失格のようだ・・・・・・我が友、真理亜よ・・・・・・アハ神様のことを頼んだぞ・・・・・・バタッ。」

 田んぼ少女は静かに眠った。

「ああ!? 全身の反物が取れていく!?」

 反物ミイラ少女はきれいな五反田少女に戻った。

「真理亜さん、楓ちゃん。ありがとうございました。アハッ!」

「笑っていれば何でもできる! いくぞ! 1! 2! 3! アハッ!」

 順調にアハ教の教えを布教していく真理亜。

「これであなたもアハ教徒。ミサには参加してね。アハッ!」

「はい。ありがとうございます。必ず行きますね。アハッ!」

 ミサはアハ教徒のイベントである。

「アハッ! の掟は私が守る!」

 五反田村は平和になった。

 つづく。

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