第3話 一子相伝少女

「時代劇でもタイキック! 〇〇少女ワールド! アハッ!」

 真理亜、お友達10億人キャンペーン実施中!


「いや~! 道場のご飯はおいしいでござる! アハッ!」

「お腹いっぱいご飯が食べられるって、いいね!」

 大神姉妹はタイキックを教えてもらった道場にご飯をたかりにやって来た。

「ねえねえ、お姉ちゃん。」

「なに? 楓。」

「クルンテープ・マハーナコーンって何?」

 楓は壁に貼っている文字を読んだ。

「知らない。私に読めると思う?」

「思わない。アハッ!」

 仲良しの真理亜と楓。

「バンコクの正式名称じゃ。」

 その時、道着を着たオッサンが現れる。

「師匠!?」

「ガパオちゃんだ。アハッ!」

 現れたのは真理亜のタイキックの師匠ガパオ・ライスである。

「真理亜、楓。元気だったか?」

「はい! 師匠!」

 師の登場に直立不動で怯える真理亜。

「聞いてよ。ガパオちゃん。お姉ちゃんの性で今日のご飯が買えなかったの。楓、お腹が空いちゃった。」

 孫がおじいちゃんに甘える様に、キャバ嬢の様に師匠に寄り添う楓。

「なに!?」

 ギロっと真理亜を睨むガパオ。

「真理亜! 貴様! ワシのカワイイ楓にご飯すら食べさせてないのか!」

「ヒイイイイイー!?」

 真理亜は縄で縛られてSMチックに磔獄門の刑にされ庭に干された。

「助けてください!? お許しください!? 神様! 仏様! 師匠様!」

「反省しろ。おバカ弟子め。アハッ!」

「反省しなさい。おバカお姉ちゃん。アハッ!」

 首都バンコクのタイは微笑みの国であった。アハッ!

「アハ教徒に失敗は許されないのだ。」

 アハ教のアハ神のいる総本山がタイのバンコクにあることは厳戒秘密事項である。

「アハ教の目的は、微笑みで世界を征服することじゃ! アハッ!」

 悪の秘密結社、アハ教の真実が明らかになる。

「いや~、話がつながった、つながった。何だか嬉しいね。ガパオちゃん、お肩を叩いてあげる。」

「おお~、楓はいつも優しいな。ワシは良い孫をもったものじゃ。アハッ!」

 おじいちゃんとカワイイ孫の温かい光景である。

「こらー! 私たちは捨て子でしょうが!?」

「それがどうした? いない血のつながりよりも、近くの楓じゃ。アハッ!」

「さすがガパオちゃん! 人生を分かってる! アハッ!」

 真理亜と楓は捨て子であった。

「・・・・・・本当のことを話そう。実はおまえたちのお父さんとお母さんは殺されたのだ。」

「なんですと!?」

「ぶっこみすぎだよ! ガパオちゃん!」

 何と真理亜と楓の両親は殺されていた。これで父の慎太郎と母のヒバリが出ることは回想しかないだろう。

「どうして!? 私たちの両親は殺されないといけなかったんですか!?」

「いったい誰がお父さんとお母さんを殺したの!?」

 衝撃の展開に慌てふためく大神姉妹。

「おまえたちの両親を殺したのは・・・・・・兄の一郎だ。」

「犯人は一郎お兄ちゃん!?」

「これだけ長い〇〇少女ワールドなのに、一度も出てきていない一郎お兄ちゃん!?」

 そう、一郎は未知なる存在であった。

「我が、バンコク王朝古式ムエタイ、ガパオ神拳は一子相伝。正統継承者が真理亜に決まった時に、一郎は止める慎太郎とヒバリを殺して去ってしまったのだ。」

 恐るべし、ガパオ神拳。

「嘘よ!? あの優しかった一郎お兄ちゃんがお父さんとお母さんを殺すなんてありえないわ!?」

 一郎を知っている真理亜は信じることができなかった。

「私は一郎お兄ちゃんを見たことが無い。一郎、殺す。」

 一郎を知らない楓は兄の一郎は親の敵になった。

「いつかどこかで正統継承者である真理亜は、一子相伝のガパオ神拳を知っている兄の一郎を不届き者として殺さなければいけない。これがガパオの掟だ。」

 ガパオ・ムエタイ道場で修行をした真理亜と一郎。実の兄弟なのに殺し合わなければいけない。

「一郎お兄ちゃん。」

 真理亜は兄弟で戦いたくないと思うのであった。

「真理亜よ、一郎も一流のガパオ神拳の使い手だ。おまえが一郎に勝つためには、ガパオ神拳の三大奥義をマスターしなければいけない。」

「三大奥義!?」

 ガパオ神拳には三つ奥義があった。

「一つ目がトム・ヤム・クン!」

「トムヤムクン!?」

 まさか!? 

「二つ目がトム・クルーズ!」

「トムクルーズ!?」

 この展開は!?

「三つ目がトム・ハンクスだ!」

「トムハンクス!?」

 しっかりしたオチである。 

「なんて恐ろしいんだ!? 三大奥義!?」

 ある意味で真理亜は奥義の恐ろしさを知る。

「そうだ。三大トムを使いこなしてこそ、正統継承者として、兄の一郎に勝つことができるだろう。」

「楓、あなたは生まれてなかったから、殺されずに済むのよ。良かったわね。」

「お姉ちゃんは、もし楓がガパオ神拳を習っていたら、私を殺す気だったの!?」

「なんと妹に対して酷い仕打ちじゃ!? 真理亜! おまえが自害して果てろ!」

「ええー!? そんなアホな!?」

「楓はワシのカワイイ孫じゃからな! アハッ!」

「ガパオちゃん! 大好き! アハッ!」

 孫とおじいちゃんの心温まる会話であった。

「どこがじゃ!? 自害しろと言われて素直に死ねるか!?」

 まだまだ真理亜の災難は続く。

 つづく。

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