第52話


「ヒロインちゃんが?イレギュラー?」


「そう。本当は華がヒロインの予定だったんだ。それなのに間違えてしまった。だから、華を仕方なくアルメディアとして転生させたんだ」


仕方なくで悪役令嬢のアルメディアに転生させるだなんて。

ちょっと強引じゃないかなぁ。

そのせいで、私もヒロインちゃんも混乱してしまったのに。


「そう。どうして間違えたのかしら?」


私がそう確認すると、凪はしばらく黙りこんでしまった。


「……凪?」


凪に言葉の先を促す。

凪は、少し戸惑いながらも告げた。


「この世界のヒロインになるには条件があるんだ。その条件に該当してしまったのが、今のアンナ嬢だ」


「条件?どんな条件だったの?」


「まずは、名前。あの子も華という名前だった。それに生年月日も一緒だ。そして、大切なものを亡くして、自暴自棄になって全てに絶望してしまったという条件」


私を表す条件がそれ?

確かに、全てに絶望していたけれども私の中には微かな希望があった。

死んだら凪に会えるのだろうかと。凪の分まで生きて、次に凪にあった時の土産話にしようと思っていた。

だから、少しだけ私とは条件が異なってしまった。それで、今のヒロインちゃんが選ばれた。

私より条件にぴったりと当てはまってしまったヒロインちゃん。

ヒロインちゃんも前世では全てに絶望していたというの。

ならば、ヒロインちゃんも幸せにならなければならない。

辛い思いをしたのだから、今度こそはヒロインちゃんにも幸せになってほしい。


「……私以外にもいたのね」


「うん。偶然にもいてしまった」


「そう。でも、私はヒロインちゃんと友達になれたわ。だから、もう大丈夫なんじゃないの?」


私はそう凪に確認したが、凪はゆっくりと首を左右に振った。


「シナリオが僕たちの手から離れてしまったんだ。だから、これから先どうなるかわからない」


そういうことか。

本来なら私がアンナ嬢になるはずだった。それが、ずれてしまったからシナリオ通りに運ばなくなってしまったのね。

だから、新しい悪役令嬢と思われる乙女ゲームの中の私の取り巻きが表にでてきた。

ここから先はシナリオにはない展開になるということ?


「でも、華。安心して。僕たちは必ず君だけは幸せにしてあげるから。安心していていいよ」


凪はそう宥めてくるけれど、でも私だけ幸せになるなんてできない。


「幸せになるなら、みんなが幸せになってほしいわ。私だけじゃなくて、みんなで幸せになりましょう」



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