第50話

凪の部屋はとても豪華だった。

触ってはいけないような置物が数点ある。でも、成金な感じはしなくてセンスの言い置物である。


……あれって、国宝じゃなかったかしら?


凪の部屋に置いてあった美しい猫の置物。あれ、一度王宮で同じものを見たような気がする。

凪ってばいったい何者!?


「凪……あなたいったい何者なの?」


思わず、直接聞いてしまう。

攻略対象の猫だと思っていたのに。

これは一体どういうことだろう?


「僕?僕はね……この世界ではアレキサンドライト王子の双子の兄なんだ」


えっ?

アレキサンドライト様の双子の兄!?

双子の兄がいるなんて聞いたことないんだけど。

ゲームでもそんな存在はでてこなかった。いや、出てこなかったんじゃない。

隠しキャラを出せなかったから、その隠しキャラが凪ってこと?


でも、待って。


凪は隠しキャラの猫のナギなんでしょ?

なんで、凪が王子様なの?


「何で?って顔しているね」


凪が優しく微笑む。

混乱したまま、私はコクコクと頷いた。


「まだ、気づいていないの?華は鈍感だね?」


「えっ?」


「僕はね、猫のナギでもあるし、王子のナギサでもあるんだ。でも、僕の存在を知るものはごく一部。だから僕の名を知っているのもごく一部の人だけ」


「どうして?どうして、凪の存在は知らされていないの!?」


アレキサンドライト様と同じ王子なのに。

どうして!?


「僕はね、産まれながらにして神使でもあるんだ。王家の双子の兄はもれなく神使なんだよ。神使は神に近いもの。だからその存在を隠すんだ。僕の存在を悪用されないように」


「…………神使?」


ダメだ。

話についていけない。

凪が神使だなんて。


「そう、春が僕を神使として設定したんだ。華が幸せになれるように」


「………………どういうこと?」


「今はまだ秘密。時が来たら春が説明してくれるよ。僕には説明できない。そういう設定だからね」


「わからないわ」


「そうだね、春の愛は深すぎて僕にも想像ができない。でも、ひとつだけ言えるのは、この世界は華を幸せにするためだけに春が作ったんだ。だから、君は幸せになれるよ。必ず」


この世界は私のための世界?

だったら何故、私は悪役令嬢なの?


凪の手を握りながら、凪を見上げる。

もう、情報量が多くて、告げられた内容が突拍子もなさすぎて処理しきれない。


「僕も華には今度こそ幸せになってほしい。だから、春に強力しているんだ」


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