第20話

お膝にピョンっと飛び乗った白猫様をじぃっと観察する。


ピンと張った耳に、全てを見透かすようなまあるい目の色は赤。


白く長い尻尾は左右にゆらゆらと揺れている。


全身真っ白で一点の曇りもない完璧な白猫。




「可愛いわね。」




でも、どこかで見たような・・・。


記憶を探る。


とても遠い過去で見たような記憶がある。


記憶を遡ると、導き出されたのは、




「ナギ様っ!?」




そう、前世で嵌っていた乙女ゲームにでてきた猫様にそっくりだった。


真っ白な猫で神出鬼没な猫様。


ちなみに、乙女ゲームで攻略したキャラの猫ではなかった。


ほんとうに突然現れてスチルの隅にこそっと映るだけの猫様。


ゲームをしていたときは「可愛いなぁ」と見とれていたが、今思えばこのナギ様、攻略対象者の猫様の可能性が高いということに気づいた。


だって、ゲーム上で名前がついていた猫様はもれなく攻略対象者の猫様だったから。


でもでも、隠しキャラ以外の攻略者の猫様はナギ様じゃないことは確実。


なぜならば、隠しキャラ以外のルートは制覇したからだ。


だとするならば、ナギ様は隠しキャラの猫様の可能性が高い。


非常に高い。




これは、ヒロインちゃんに知らせなければならない。




でも今は目の前のナギ様を堪能しなければならない。


ゲームではなかなかナギ様にはお目にかかれなかったのだからこの世界のナギ様にも会える可能性は低いのかもしれない。


会えたら全力で可愛がらなくては!


私は隠しキャラのことを一旦忘れて、ナギ様を愛でることにした。




プニプニのお手て。


肉球がサーモンピンク色をしていて、触った時のぷにっと感が堪らない。




うう。至福・・・。




そんな私に忍び寄ってくる、ナギ様と私の至福の時間を横取りするような足音が聞こえた。

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