第18話

始業式はつつがなく終了した。


ここでのイベントはヒロインちゃんが遅れて登場するシーンだが、転生者なヒロインちゃんはもちろん遅れてなんてやってこない。


つまり、始業式でのイベントは発生しなかった。




このあとは。教室に戻っての自己紹介のシーンがある。ここで、ヒロインちゃんとマクロン様の絡みがある。




元気いっぱいのヒロインちゃんにマクロン様が「うるさい」と一言言うのだ。


さて、どうなるのか私は一生徒として観察する。




「さて、初等部からの持ち上がり組も多いけど、初めて会うものも多いことでしょう。一人ずつ自己紹介をおこないましょう。では、廊下側の前から順に自己紹介をしてください。」




あれ?




あれれ???




自己紹介することになるのは一緒だけど、なんでここで攻略対象が担任になっているの??




攻略対象の一人、マーベルク・ダージキール。


それが、担任の名前だ。


整った顔立ちには柔和な笑みが浮かんでいる。


生徒たちの中にも先生をぽぉーと眺めている女子生徒もいる。




それはいいんだけど、なぜ担任?




思わず、ヒロインちゃんの顔を見てしまった。


ヒロインちゃんも、私の方を見つめていたので、目がバッチリと会う。


ヒロインちゃんもやはり、ビックリしているようだ。


目をパチクリと瞬いている。




それでも、自己紹介が続いており、ヒロインちゃんの番になる。




スッと立ち上がったヒロインちゃんは、落・ち・着・い・た・淑・女・の笑みを浮かべて自己紹介をおこなう。




「アンナ・ランドイッチです。皆様ご存じかと思いますが、私はランドイッチ男爵を父に持ちます。母親は正妻ではありませんが、男爵令嬢として10才の頃から育てられました。生粋の令嬢ではございませんが、皆様の学友として相応しくありたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」




うむ。


スラスラと淑女のように告げ、恭しく着席する。乙女ゲームのヒロインちゃんんとは思えないほど、落ち着いた淑女がそこにいた。


特訓の成果があったわね。


もちろん、これは私がスパルタ指導した。




少しでも、断罪&ざまぁ要素をなくすためだ。




ここで絡む予定のマクロン様も特に何も言わない。


どうやらイベントはスルーされたようだ。


ホッと息を吐いた瞬間、




「では、アルメディア嬢、自己紹介をよろしくお願いいたします」


マーベルク先生の声が響いた。


ん?


おかしい。


なぜ、今私のファーストネームを呼んだ?


おかしいぞ。


この世界、ファーストネームで呼び会えるのは親しい間柄というのが鉄則だ。


それが、なぜ?




「アルメディア嬢?」




考え混んでしまった私にもう一度名前を呼ばれる、




「は!はひぃ!!」




あ、噛んだ。積んだ。




穴があったら入りたい。




「アルメディア・レコンティーニですわ。よろしくお願いいたしますわね」




早口でそれだけ告げるとさっと席に座る。


恥ずかしい。


このまま埋まりたい・・・。

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