第7話
あれから、アレキサンドライト様の様子がおかしい。
私を見るとにっこり微笑んでくる。
おかしい。
絶対におかしい。
ゲームでは、悪役令嬢の私には笑いかけてくれなかったのに。
放課後の裏庭で、膝の上に黒猫のクロロを乗せながらアレキサンドライト様の様子を思い浮かべる。
最近のアレキサンドライト様は、微笑んでばかりだ。
それこそ、ゲームのヒロインとの好感度が70を越えたあたりのアレキサンドライト様に近い。
解せぬ。
なぜだ。
あれから、アレキサンドライトを見かける度に逃げ出す私。私に対して好感度が上がるはずもない。
まあ、アレキサンドライト様とは話してはいないが、ティーガとはよく話している。
というか、ティーガが夜になると必ず私の部屋に入ってくるのだ。そして、朝まで私の布団で寝ている。
逃げないモフモフが、側にいて触らずにはいられず毎日ティーガの体をなで回しながら、ティーガがいかに素敵な猫様なのか、可愛いのかを毎日毎日独り言のように言いながらティーガと一緒に寝ていた。
ゲームでは、ティーガとアレキサンドライト様になんらかの繋がりがあったみたいだから、ティーガと仲良くしていることで、必然的にアレキサンドライト様の好感度があがったのかしら。
なぁんて考えながら膝のクロロを撫でていると、肩にトンッと軽い衝撃が走る。
そして、頬を何かに舐められる。
「ティーガ?」
こんなことをしてくるのは、ティーガしかいない。
肩に目線を落とせば案の定ティーガが私の肩に乗りながら器用に私の頬を舐めていた。
もちろん、ご機嫌に喉を鳴らすことを忘れずに。
ティーガが来たことをうけて、膝の上で寝ていたクロロが目を開けて、ティーガを見つめる。
「う゛ー」
低い声でうなり声を上げるクロロ。
ティーガとクロロが顔を合わせるといつもこれだ。
うなり声を上げるクロロとなに食わぬ顔をして、私の頬に頬擦りをするティーガ。
うう。なんて幸せなんだ。
猫様サイコー!!
クロロがちょっと不機嫌だが、私の膝からどく気配はない。
ご機嫌をとるために、クロロの顎下を優しくなでると、目を細めてクロロが喉を鳴らし始めた。
可愛い。
「あんた!悪役令嬢のくせになんで、クロロまで手なずけてるのよ!!」
猫様二匹と幸せを噛み締めていると、後ろからヒロインちゃんの声が聴こえてきた。
めんどくさい。
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