第3話

ピンク色の髪に晴天を思わせる瞳の色。


抜けるような白さの肌に、瑞々しい唇。


ぱっちりとした猫を思わせるような目。


なにもかもが、記憶の中のヒロインと同じ。


入学の時期は違うが、ヒロインなのだろうか?




「まずはその子を離して。貴女は誰?」




ヒロイン(仮)は素直に猫を下に下ろして、こちらを睨み付けてくる。




あれ?ヒロインは心優しい女の子だったのに・・・。やっぱりこの子はヒロインじゃないのかしら・・・?




「私は、アンナ・ランドイッチよ。未来の王太子妃よ。って、貴女悪役令嬢じゃん!!」




あ、転生者きた・・・。




「悪役令嬢ってなんのことですの?」




私が転生者ってバレたらなんか嫌な予感がする。


ここは、知らない振りをしよう。


そして、今後この子には近づかないようにしよう。




「まあ、いいわ。貴女手加減しないでじゃんじゃん私の悪口を言っていいからね!そうすれば私は王太子妃まっしぐらよ!うふふ。」




「王太子?今、この国では王太子はまだ決まっていないはずよ?殿下方が成人してから決められるはず」




「決まっているわ。アレク様が王太子になるのよ!そして、私は王太子妃になるのよ」




アレキサンドライト様。通称アレク様はこの国の第一王子。ゲームを進めていくことで、アレクが王太子になるが、ここはゲームとは似ているがゲームの中ではないと思っている。


それなのに、王太子がアレクに決まっているなど、やはりアンナは転生者確定だわ。




「アレキサンドライト様とお呼びになった方がいいわ。親しくもないのに不敬だわ」




「あら、私は王太子妃になるのよ。愛称で呼んで何が悪いの?って、ティーガ!悪役令嬢の足にすりすりしないで、こちらにいらっしゃい。私が王太子妃になるのよ!」




いつの間にかティーガと呼ばれる黄金色の猫が私の足にすりすりしてる。




可愛い。。。


抱き上げていいかしら。




ヒロインがまだ何かわめいているけれど、この子の可愛さの前では気にもならない。


しゃがんで、ティーガの目線に会わせると


「抱っこしてもよろしいでしょうか?」


と、確認をとってから、ティーガを抱っこする。


ティーガは大人しく私の腕に抱っこされた。


目を細めて、小さな聞こえるか聞こえないかの声で、「にゃぁ~ん」と鳴いてから気持ち良さそうに目を細める。


それから、胸に頭を刷り寄せてくる。




なに、コレ。ちょー可愛いですけど!!


こんな可愛い子相手に誰かの悪口なんか言えるわけないじゃない。悪役令嬢ってほんと猫のこと嫌いだったのね。。。


私には無理だわ。




「ちょっと!悪役令嬢!!ティーガを返しなさいよ!」




アンナが私の腕から無理矢理ティーガを奪っていく。




「あ!ちょっとティーガ様を乱暴に扱ってはダメよ!猫様たちはね、繊細なのよ。急な動きや大きな声を嫌うの。だから優しく接しなければなついてはくれないわ」




「きゃっ!」




案の定、嫌がったティーガにアンナが爪をたてられた。その痛さに、ティーガを抱いている手を離す。


ティーガはピョンっとアンナの腕から抜け出し、軽やかに茂みの中に消えてった。

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