堕転勇者と復活の大魔獣《レヴナント》~魔王に復活させてもらった村人の復讐譚~

狼煙(アズ)

第1話 魔王様ありがとう

 ある日、俺の住む村に勇者がやって来た。修行のためにこの村に居座るらしい。勇者は背が高く、すらっとしたボディを持つ異世界人の様だ。

 夜、俺は隠して飼っている小さな黒猫へ会いに、洞窟へ向かっている途中だった。まばゆい閃光が俺の方へ向かってきた。良く見るとそれを放ったのは勇者だと分かった。閃光は俺を包み、跡形もなく消し飛ばした。


「勇者なら勇者らしく人助けをしろ!必殺技の練習で巻き添えにするなぁぁぁぁぁあああ!」


 俺の魂はそう叫びながら光となり、空へと飛んで行く。――が、途中で真っ暗な城へ連れて行かれた。その城は魔王の住むものだ。魂の中から意識が遠のいていき、気絶した。



「あ~あ、勇者が堕天使ちゃったよ…」


 少女の様な澄んだ声が聞こえた。


「魔王様、勇者を倒さなくてよろしいのですか?」


 メイドの様な声が聞こえて、確信した。少女の声の元は魔王なのだと。


「別にいいよ。だって堕天使ちゃったし。でも、この子の餌としては良いかもね。あ、目が覚めたみたいだ!」


 あまりに驚いてしまって、盗み聞きするつもりが起き上がってしまった。


「貴女が…魔王?」


 聞いてみた。敵対心の無い今こそ聞くタイミングだ。それより、何で生きてんだ?


「私が魔王よ。貴方を復活させたの。ちょっと改良したけどね。まぁ良い。おはよう、大魔獣レヴナント


 彼女は笑った。何の恐怖もたくらみもない可愛らしい笑顔だ。


「レヴナント?」

「ああそうさ。君は魔獣と魔女のハーフの体を持っているんだよ。君の耳は動物の…いや、狼の物だ。その尻尾もね」


 彼女は俺のお尻辺りを指さす。そこへ視線を傾けると、人間の肌から生える毛むくじゃらの尻尾。確かに狼の様だ。


「俺はこれからどうすれば…」

「私に牙を向けなければ自由に生きてもらって構わないよ?」

「ありがとうございます!魔王様!」


 俺は深々と頭を下げる。

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