第4話 ボリビアの商店街にて

 この間、初めて南米のボリビアを訪れた。ぜひ行ってみたいと思っていた国だったが、地球の反対側にあり、飛行機を二度乗り換えてようやくたどり着けるようなところなので、なかなか行かれなかった。治安が悪いと言われているのも不安だった。運よく知人が長期滞在していたため、行こうと決心した。知人からのメールには、「バスで来るなら、すりが多いので、お財布は厳重に管理するように」とあった。


 そんなボリビアのラパスに長期滞在していた際、泥棒だらけだといわれる商店街によく通っていた。私が旅疲れしていて、盗む価値のあるものを所持していると思えなかったのか、何の被害にも遭わなかった。明らかにカタコトのスペイン語で話しかけると、みんな誠意を持って対応してくれた。お釣りを受け取り忘れても、声をかけられ、必要な額を返された。わかりやすい観光地では「日本人なんだから、もっと買ってよ」などと言われることもあったので、そのように、明らかに外国人でありながら、放っておいてもらえるのは心が安らいだ。


 ある日、トイレットペーパーを買った時のことだった。テーブルを並べた程度の簡易な出店で、ばらのロールが一巻き15円ほどで売られていた。その中から一番手前にあるものを選び「これください」というと、売り子のマダムが「これは汚れているから、きれいなのに替えるわよ」と言って、汚れていないものに変えてくれたのだった。汚れたトイレットペーパーは、後で自分で使うのだろうか。その程度の汚れは、そこだけちょっとちぎれば何の問題もないようなものに見えた。地元の人が相手でもそうしたのか、私が外国人だったから「はるばる遠くから来たのに、汚れたペーパーを売るなんてかわいそうだわ」と思ってくれたのか。偽札が平気で出回るようなところで、こんなことに気遣ってくれる人もいるのだ。ボリビアでの、忘れられない思い出の一つとなった。

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