京都魔界伝説殺人事件・2

近衛源二郎

第1話 迷コンビ復活

姉小路公康殺人事件が解決して、京都の街に平穏が戻って数ヶ月。

五条大橋の東詰、昼間なら清水を望む五条川端の交差点。

夜な夜な、妙な強盗が出没し始めた。

『刀をよこせ・・・。』

と、平成の今に、あり得ないことを口走っている。

『なんなんだ・・・

 強盗のくせに、盗む気が

 ないのか・・・。』

京都府警察本部捜査1課捜査1係の机では、若手刑事の真鍋勘太郎が、番茶を飲んだ湯飲みを置きながら、ため息を付いている。

『まぁ、制服さんに任せて

 しばらく様子見よか。』

木田警部補の判断では、頭がおかしくなっているという考え方で、凶行犯係の自分達より、生活安全課が専門という見方。

五条大橋と言えば、牛若丸と弁慶が出会った場所として有名であるが、現在の五条通りは、当時の六条坊門小路に当たる。

当時の五条通りは、清水坂を下って真っ直ぐ鴨川を渡っていく道であったということで、現在の松原通りであったということになる。

とはいえ、現在の五条大橋には、国道1号線という大役がある。

まして、西詰には、京人形風の牛若丸と弁慶の石像が建てられ、観光地化されている。

ところが、その石像の下。

少し植え込みになっている根っこの下に、この強盗が変死体となって転がってしまった。

『勘太郎、行くで・・・。』

木田の邪魔くさそうな合図で、勘太郎も立ち上がった。

『どうせ、返り討ちか何か 

 でしょう・・・

 自業自得ってことで。』

『ハハハ・・・

 たぶん、その通りや。

 けど、それでも、そいつが

 被害者で、犯人はおる。

 事件なのか事故なのかは

 まだ判断するべきやない。』

現場も見ずに判断することではないのだが、今回は被害者の心象が悪すぎる。

盗んだ物はない。

盗まれた被害者はいない。

ということで、恨まれていたとは考えられない。

刑事達は、たぶん何かの事故だろうと思っていた。

『身元は・・・

 死因は推定しているのか。』

木田警部補が、矢継ぎ早に質問して、現場に緊張感が漂う。

『警部補・・・

 外傷らしい外傷は、ありま

 せん・・・。』

鑑識の報告に、一同驚いた時、

真鍋勘太郎の一言が現場をひっくり返す。

『なんか、甘い臭いしませ

 んか。』

鑑識が、全員マスクを着用して、ことの重大さが現場に漂うことになった。

被害者の胸に、少しヨダレの跡が。

鑑識が。ヨダレ跡に強くこだわった。

『真鍋刑事・・

 ご名答ですわ。

 この甘い臭いが死因です。』

鑑識が、勘太郎に言った。

『毒殺ですか。

 それにしても、この被害者、

 何者ですねん。』

被害者に近い鑑識課員は、マスク無しで、意識がおかしくなっていた。

『アカン・・・

 全員マスク着用お願い

 します。

 シアンです。』

勘太郎が慌てて叫んだが、時すでに遅く、何人かは意識に障害が出てしまって、救急車で搬送するはめになってしまった。

木田と勘太郎は、少し遅く到着したので助かったようだ。

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