第688話 特攻! 分身体
バイザーの映像を、《海龍》に残してきた二機の偵察ドローン
紫雲を置いてきたのは、先ほどミールと一緒に降りた潜舵の下。
その映像に映っているのは、身長三十センチにまで小さくなったミールの分身体七体。
その七体の
裸同然の際どいビキニアーマーをまとった猫耳美少女軍団と、帝国兵がぶつかり合う。
たった七体とは言え、剣も銃も通じない不死身の美少女軍団相手に帝国兵は
だが、ミールの分身体をここに待機させていた目的は、帝国兵と
開いたばかりのワームホールに、攻撃を仕掛けるためだ。
さっきまでは、ワームホールに攻撃をかけても、攻撃が届く前に閉じられてしまっていた。
ならば、敵に察知される前に攻撃を仕掛けるしかない。
それには、これからワームホールが開く位置を予測し、近くに伏兵を配置する必要がある。
問題は、ワームホールが開く位置と場所をどうやって予測するか?
ワームホールはミーチャの視線の先に現れる。
先ほどから、イリーナはミーチャを押さえ込んで《海龍》後甲板の方向を向かせていた。
つまり、次のワームホール出現位置は《海龍》後甲板。
問題は
敵は先に、《海龍》から離れた空域にワームホールを開いてドローン群を送り込んでいた。
この目的が、ドローンで攻撃を仕掛けるように見せかけて、迎撃に上がってきた九九式を《海龍》から引き離す事だとしたら、僕たちが十分に《海龍》から離れたタイミングで後甲板にワームホールを開くはず。
事実そうなった。
だが、それを予想していた僕は、後甲板にワームホールが開いたらすぐに攻撃を仕掛けられるように、ミールの分身体を潜舵の影に潜ませていたのだ。
潜ませていた七体の分身体の一体には、手榴弾を持たせてある。
後は、その一体が敵に気づかれる前にワームホールに入って時空穿孔機を破壊するだけ……
「カイトさん」
ミールに声をかけられ、僕はバイザーの映像左半分を消した。
僕に抱かれたまま目を瞑っているミールの姿が目に映る。
ミールは目を開かずに言った。
「分身体がワームホールに入ると、コントロールできなくなるかもしれません」
なんだって? いや、その可能性はあった。もし、ワームホールがプシトロンパルスを通さないのなら、地下施設に入った分身体は制御できなくなる。
「だから、ワームホールに入る前に手榴弾の安全ピンを抜いておきますがいいですか? もし、コントロールが途切れても、向こうで手榴弾を爆発させればいくらかのダメージを与える事はできます。コントロールが途切れなければ、予定通り時空穿孔機を破壊します」
「わかった。それでやってくれ」
「はーい」
紫雲からの映像に視線を戻した。
その時、分身体の一体が大きくジャンプして潜舵の上に飛び乗った。
そこからさらにジャンプして、ワームホールの前に着地。
手榴弾の安全ピンを抜いてから、ワームホールに駆け込んだ。
「カイトさん。やはりコントロールが途切れました」
ミールがそう言った直後、ワームホールから爆風が吹き出す。
バラバラになった帝国兵の遺体とともに……
おそらく、ワームホールの向こうで、こちらへ突入しようと待機していた兵士たちだろう。
時空穿孔機の破壊は失敗したが、敵も今の攻撃で少なからぬ損害があったはずだ。
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