第610話 つまらないなら切るなあ!

 小淵が四人の捕虜をピストン輸送で連れ帰るのが終わったのを確認すると、僕たちは再び山頂基地を出発した。


 今回は僕と芽依ちゃんの他に、ミールとキラ、ミクがオボロに乗って空から向かう。

 

 地上からはテントウムシが向かっていた。


 その中には、ミーチャに変装したアンドロイドが乗っている。


 そして、僕と芽依ちゃんの間に作用している反重力場の中で、Pちゃんが浮かんでいた。


「できれば、ご主人様にお姫様だっこしてほしいのですけど……」


 Pちゃんが物欲しげな視線を僕に向けてくる。


「P0371! ロボットが、そういう事を言ってはいけません」

「はい。芽依様。申し訳ありません」


 芽依ちゃん、そんなきつく言わなくても……


「北村さん。そろそろ、敵が第一層に上がってくる頃です。早く行かないと、橋本さんが勝手に戦闘を開始してしまう恐れが……」

「そうだね」


 だが、時すでにおすし。


 地下施設内部に入った僕たちが目にしたのは、十人ほどの帝国兵と刃をまじえる九九式の姿だった。


 スミレ色の機体は、返り血を浴びて真っ赤に染まっている。


 いったい何人切ったのだ? 彼女の足下には、帝国兵の遺体が何体も転がっていた。


 可愛い顔して、とんでもない戦闘狂パーサーカーだな……


 とにかく、味方が戦っているのにぼうっと見ているわけには……行かないのだが、僕らが介入する間もなく、戦闘はあっという間に終了してしまった。


 最後の一兵の首をはねると、彼女はおもむろに日本刀をさやに収める。


「ふ! またつまらぬ物を切ってしまった」


 つまらないなら切るなあ!

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