第472話 清々しくない朝2

「どうしたのですか?」


 キラの背後からミーチャが顔を出す。


「ミーチャ。敵襲のようだ。危ないから隠れていなさい」

「もう。キラさん、僕だって男ですよ」


 ミーチャは、プーっと頬をふくらませる。


「ミクさん。キラさん。ミーチャさん。おはようございます」


 姿は見えないが、Pちゃんの声が聞こえた。充電が終わったようだ。司令塔の下にいるようだが、この状況見たら怒りそうだな。


「メイドさん。みんなが甲板で倒れているよ」

「ミクさん。大丈夫です。酔いつぶれているだけですよ。みなさん、昨夜はかなり飲んでいましたから」

「飲んでいた? そう言えば、なんかお酒臭い。もう、これだから大人って……」


 面目ないな。


「ひい!」

 

 ミーチャが小さな悲鳴をあげた。


「どうした? ミーチャ」

「アレンスキー大尉が、なぜここに」


 いけない。エラを特例で呼んだ事をキラとミーチャに伝えておかなかった。どうせ、すぐに《水龍》に戻ってもらうつもりだったからな。


「なに? 《海龍》には来させないという約束だったのに……安心しろ。ミーチャ。お姉さんが守ってあげるから」


 そう言ってキラはミーチャを抱きしめる。その顔は妙に嬉しそうだ。


「ねえ、ミーチャ、キラ。エラも寝ているみたいだし、今のうちにやっちゃおうよ」

「ミクさん。やるって?」「何をやるというのだ。ミク」

「ええっとね。とにかく、ミーチャはこのオバンに散々いじめられたのでしょ」


 いや、待て。それをやったのは他のエラであって、ファースト・エラは関わっていなかったのでは……


「寝ている間に、仕返ししちゃおうよ」


 ミクの提案に対して、ミーチャはブルブルと激しく首を横に振る。


「無理です! 無理です! そんな事をしたら、後で半殺しに……いや、全殺しにされます」

「大丈夫だよ。あたしとキラが守るから。仕返ししちゃおうよ」

「いいです。仕返しなんて」

「復讐したくないの?」

「復讐なんてしなくていいです。そんな事をしたって楽しくないし……とにかく、僕はこの人とは永久に関わりたくないのです」

「そっかあ……」


 ミクは司令塔からスタッと甲板に飛び降りると、寝ころんでいるエラの側に近寄った。


「ミクさん。アレンスキー大尉に近づくのは危険です。突然暴れだし……あわわ!」


 ミクを止めようとして慌てて司令塔から飛び降りたミーチャは、足をもつれさせて倒れ込んだ。


 寝ているエラの真上に……

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