第473話 エラが教官になった経緯
そろそろ起きて止めに行かないとヤバいか!?
「ムニャムニャ……カイトさあん」
あかん! ミールが起きそうにない。
ミーチャの方に目を向けると、ちょうど起きあがったところのようだが……
そろりとエラから離れようとする。
「ひいぃぃぃぃぃ!」
ミーチャは、突然エラに腕を掴まれ悲鳴を上げた。
エラは、むっくりと起きあがってミーチャの方を向く。
「少年よ。人にぶつかっておいて、挨拶はなしか?」
「ご……ご……こべんださい! ゆるじて! ごろさないで!」
「おいおい。そんなに怯える事はないだろう。別に取って食おうというわけじゃなし。ん?」
涙目になって怯えているミーチャを、エラはマジマジと見つめた。
「か……可愛い!」
ガバッとミーチャを抱きしめる。
「あわわわ! イヤです! 許して下さい! ヤダ! ヤダ! ヤダ!」
「少年よ。そんなに嫌がる事はないだろう。私だって、傷つくぞ」
いや、無理だ。ファーストエラには覚えはないけど、ミーチャは他のエラからひどい目に遭わされたのだから……
「やめろ! ミーチャから手を離せ」
「やめなさい! ミーチャをイジメたら、許さないんだから!」
キラとミクが駆け寄ってきて、ミーチャとエラを強引に引き離した。
ミーチャを背後に庇い、二人の少女がエラを睨みつける。
「なんだ? 私はまだ何もしていないぞ? なぜ、そんなコワい顔で睨みつける? ん? おまえ、キラ・ガルキナではないか」
「私を知っているのか?」
「おいおい、指導教官の顔を見忘れたか?」
「もちろん覚えているが、エラ・アレンスキーは八人のコピー人間がいた。私の指導教官を勤めていたのは、あんただったのか?」
「ああ、その事か。キラ・ガルキナの指導教官は八人の私が交代でやっていたのだ。だから、私が当番をやった時もあったので、君の顔は知っている」
「なんだって? では、いつもは私に罵詈雑言を浴びせ、暴力を振るっていたエラが時々妙に優しくなる時があったが……」
「たぶん、それは私が当番だった時だ」
「そうだったのか? 何か企んでいるのではないかと思っていたが……」
「何も企んでなんかいない。というか、他のコピーどもは君にそんなひどい事をしていたのか。ではコピーどもの代わりに私から謝っておこう。済まなかった」
「え?」
「なんだ? 私が謝ったら変か?」
「いや、あんたは人に謝るような人では……」
「他のコピー共とは一緒にしないでくれ。それより、キラ・ガルキナ。分身魔法を使いこなせるようになったようだな。おめでとう」
「え? あ……ありがとう。しかし、これはナーモ族のカ・モ・ミール師匠のおかげであって……」
「ああ、分かってる分かってる。私の指導などなんの役にも立たなかったのだろう」
「分かっていたのか?」
「私は雷魔法……この呼び方は好きじゃないな。私は電磁能力者だ。分身魔法の能力者の役に立つ指導ができるわけないだろう」
「なんだって? それならなぜ、指導教官など引き受けた?」
エラは顔をしかめた。
「私は指導教官の話を断ったのだ」
「え? 断った?」
「しかし、他のコピー共が勝手に引き受けてしまったらしい」
「なんだって?」
「だから、No.2の奴を問いつめてみた。電磁能力者である我々に、
「玩具だと!? あいつらは私を玩具にしていたというのか?」
「言っておくが、私は反対したのだぞ」
「そうだったのか? そういえば、分身魔法での尋問対策を教えていたのは……」
「ああ。それは私だ。どうせ、教えるなら役に立つことでもと思ってな。あの方法は私が考えたのであって、他のコピーどもは知らん。メモの類も軍を脱走する時に焼却していったので、帝国軍内に知っている者はいないはずだ」
なんだって!? じゃあ、ミールの分身魔法を使った尋問は今でも有効なのか。
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