第431話 キャプター機雷

 《アクラ》は今まで使わなかったレーダーを使った。レーダーを使えば敵を発見できるが、同時に自分の位置を敵に教えることになる。


 それにも関わらずレーダーを使ったという事は、自分の位置をわざとこっちに教ているという事か。罠に誘い込むために……


 その罠を突破するには……


 僕はエラの方向いた。


「エラ。君を《水龍》に残したのは、実はそれだけじゃない。この作戦で君の能力を発揮してもらうためだ」

「私の能力?」

「さっきの空中機雷はみごとだったよ」

「ああ! あれはカミラが思いついた」


 そう言ってエラは、もう一人 《水龍》に残った紫髪の美女を指さした。


 カミラは照れくさそうに言う。


「私もああ上手く行くとは……エラのプラズマボールは速度がないので、高速で飛び回る飛行体を相手するには不向き。だけど、予め進行方向が分かっているなら、その予想進路に大量のプラズマボールを放っておけば、嫌がらせ程度にはなると思っていたので、彼女が出かける前にあの戦法を伝えておいたのです」

「私も嫌がらせのつもりでやったのだが、まさかフライング・トラクターを落とせるとは思っていなかった」


 まあ、なんにせよ、このことでエラのプラズマボールを使った作戦を思いついたわけだ。


 僕は艦長席に目を向けた。


「レイホー。魚雷は?」

「装填済みね。いつでも撃てるよ」


 よし、後は《アクラ》の動き次第だな。


 程なくして《アクラ》に新た動きがあったことをロンロンが報告してきた。


「《アクラ》より飛行体が二つ飛び立ちました。ロボットスーツです」


 レーダーを見ていると、ロボットスーツはフライング・トラクターのいる浅瀬へ向かっていた。


 ロボットスーツが浅瀬に到着するところを見計らって僕は叫ぶ。


「レイホー。魚雷発射」

「アイサー! 一番、二番発射管オープン。魚雷発射!」


 二発の魚雷が放たれた。


 魚雷に気が付いた《アクラ》は進路反転して猛スピードで逃げ出す。あの速度なら、こちらの魚雷は振り切られてしまうだろう。


 同時に向こうからも、魚雷らしき物体を水中に投下する音が四回伝わってくる。


 程なくしてソナーが二つのスクリュー音を捉えた。


 魚雷だ。


「魚雷防御」

「アイサー! 三番、四番発射管オープン。デコイ射出」


 デコイ魚雷が飛び出していく。


 程なくして、敵の魚雷はデコイに騙されて《水龍》かられていった。


 しかし《アクラ》から聞こえた物体を水中に投下する音は四回。


 そのうち二つはさっきの魚雷だとして、残りの二つは恐らく……


「レイホー。水上に出て《アクラ》を追って」

「アイサー! 《水龍》急速浮上。全速前進」

「レイホー。分かっていると思うけど、さっき《アクラ》が居た辺りには……」

「分かっているね。おにいさん。あそこには落とし穴が待っているね。でも、穴なら飛び越えてしまえばいいね」

「その通りだ」


 程なくして、さっきまで《アクラ》が居た水域に近づいた。


 ロンロンが緊急事態を報告してくる。


「ピンガーをキャッチしました。魚雷です」


 やはり来たか。


 四つの投下音のうち二つはさっきの通常魚雷。


 残り二つはキャプター機雷だったのだな。

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