第422話 ハイド島3

 ドローン三号機はハイド島の砂浜に上陸。


 ドローン七号機はその沖合約百メートルにある、小さな中州に上陸して、そのカメラをハイド島に向けた。


 三号機……三カメから送られてくる映像と、七号機……七カメから送られてくる映像を横に並べて表示して待つこと五分。


 ハイド島の森から、潜水服に身を包んだミールとキラの分身体が現れた。


「ミール、キラ。三カメの映像から外れないように、分身体を砂浜の上で歩かせてくれ」

「はーい」「了解」


 ミールとキラの分身体は三カメに背中を向けて、砂浜の上を歩いていく。


 七カメの映像で見ていると、二人が三カメから三十メートルほど離れた時、草むらが揺れてフーファイターが姿を現した。


 さて、どう動くかな?


『ゲヒヒヒヒヒヒ』


 ん? なんだ? 今の下品な笑い声は……矢納課長の声のようだが


 声の発生源はフーファイターの外部スピーカー。


 まさか、スピーカーを切り忘れていた?


 それとも、そう思わせた罠?


 いや、これからミールとキラに話しかけるつもりでスピーカーのスイッチを入れたと考えるのが妥当だな。


『よお! ねえちゃん達!』


 ミールとキラの分身体はキョロキョロと周囲を見回す。もちろん、二人ともフーファイターが声を出したのは分かっているのだが、演技でこういう事をやっているのだ。


『ここだ、ここだ』


 フーファイターは、そこで高度を上げた。


『師匠。あれは』『フーファイターだわ』


 ミールとキラは互いに抱き合い、ぶるぶると震える。もちろん、これも演技。


『そう怯えるなよ。ねえちゃん達。北村は死んだのだろう?』

『そうだ。カイト殿は死んだ』『あなたがカイトさんを殺したんじゃないの!』


 まあ、本当は死んでいないけどね。


『北村が死んだのなら、もうあんたらをどうこうする気はない。それより、困っているのだろう? なんなら俺が面倒見てやってもいいぜ』


 面倒見るとか言いながら、どうせろくでもない事を企んでいるのだろうな。


『面倒を見る? 大きなお世話です。お皿に面倒見てもらうほど落ちぶれてはいません。ねえ。キラ』『ええ、師匠。あんな人語を喋る謎の物体の世話になんかなりたくありません』

『おいおい、ねえちゃん達。この円盤は俺が操っているドローンだ。操っている俺はいい男だぜ』

『いい男? 聞きましたか? キラ。いい男ですって』『聞きました。師匠。厚かましいにもほどがありますね。不細工のくせにいい男だなんて』

『ぶ……不細工だと! 俺と会った事もないくせに』

『映像ならカイト殿に見せてもらった。だから、おまえが不細工だという事は知っている』

『なんだとう!』

『日本の言葉ではブサメンというそうですね。イケメンのカイトさんに嫉妬する気持ちは分かりますが、いくら嫉妬しても、貴方の顔は良くなりませんよ』


 だから、僕はイケメンじゃないって……


『うるせえ! 男は顔じゃねえ! 心だ!』

『まるで心ならカイトさんより魅力があるみたいな言い方ですね』

『そう言っている』

『二百年もカイトさんに逆恨みをしているようなネチッこくって、キモい男に魅力など微塵もありません』

『師匠のおっしゃる通り。ウザ過ぎて、今すぐ死んでほしいレベルの男に魅力などない』

『言わせておけば……このアマども!』

『キャー! 怒った! 逃げるのよ! キラ』『はい。師匠』


 二人は川に飛び込む。

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