第331話 奴隷制度

 男の分身体から、情報を聞き出したところ、帝国艦隊のいくつかの船は漕ぎ手に逃げられてしまい、自力では動けないそうだ。なので、それらの船はロータスまでは《アクラ》に曳航されてきたらしい。

 そして、ロータスで奴隷を調達して漕ぎ手が揃ったら、《アクラ》はそのまま艦隊を置いて帝都へ戻るそうだ。



 奴隷か……この惑星では奴隷制度は普通にある事。非難する方がおかしいのだろうけど……


「ミール」

「なんでしょう?」

「君は奴隷制度ってどう思う?」


 まずい事を聞いてしまったかな?

 ミールが答えに困っている。


「変なことを聞いてすまない。忘れてくれ」

「いいえ、カイトさんが言いたい事は分かります」


 え?


「シーバ城で、カトリさん達日本人から聞いていました。日本には、奴隷制度がないそうですね」

「ああ」

「奴隷制度は、あたしが生まれる前からありました。子供の頃は特に疑問には思わなかったのですが、大きくなってから人が人を売り買いする事を変だなと思うようになりました。他の国の事を調べてみると、国によっては人身売買を法律で禁止している国もあったのです。だから、奴隷制度はいつか廃止しなければと思っています」


 そうか。ミールはそう思ってくれているんだな。


「それよりカイトさん。このまま奴隷が揃ってしまったら《アクラ》に逃げられてしまいます」

「そうだった。奴隷の調達はもう終わっているのかな? 聞いてみて」

「はーい」


 ミールは男の分身体に向き直った。


「答えなさい。奴隷の調達はどの程度進んでいるのですか?」

「分かりません。奴隷の調達は、各船の船長が行っています。自分の船は、昨日のうちに調達が終わりましたが、他の船の状況までは知りません」


 参ったな。


『ご主人様』


 不意に通信機からPちゃんの声が響いた。路地の入口を見張ってもらっていたのだが、誰か入ってきたか?


「Pちゃん、どうした?」

『表通りを、帝国軍の軍人三名が通ります。いかがします?』


 三人か。捕まえるなら、一人で行動している奴がいいのだが……そうそう都合よくはいかないか。


 僕とミールは路地の出口へ行った。


 表通りを見張っていたPちゃんを拾い上げる。


「帝国軍人は?」

「あそこです」


 Pちゃんの指差す先で、三人の帝国軍人と三人のナーモ族が口論している。帝国軍人はこっちに背を向けているので顔が見えない。


「カイトさん。あのナーモ族、奴隷商人です」

「そうか」


 これは好都合。調達状況が分かるぞ。


 その時、帝国軍人の一人がこっちを振り向いた。


 あの顔は!?

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